
40年近く前に書かれたビジネス書ですが、その内容や考え方は働き方がどのように変わっても大切なことばかりです。 新型コロナウイルスによって在宅勤務が注目を浴びていますが、むしろリモートワークの時代にこそ、この本に書かれているマネジメントの「本質」が重要になってくることは間違いありません。
「会議」と「ミーティング」の違いなんてどうでもいい話
「会議」という言葉にはあまりいいイメージはありませんね。
重たい議題、時間のムダ、結論が出ない・・・
「ミーティング」と呼べば、もう少しポジティブな印象があります。
軽い話題、短時間、自由な発言・・・
絵にするとこんなイメージではないでしょうか?
一般的に「会議」とは何かしらの結論を出す場、「ミーティング」はとりあえず意見や情報を交換する場、というイメージだと思います。
でもこれはあくまで人のイメージです。
『会議とミーティングの違いとは?』みたいな話もありますが、私に言わせればそんな言葉の定義はどうでもいい話です。ただの言葉遊びです。
会議もミーティングも「人と人の交流の場」という意味ではまったく同じもので、その「交流の場」をいかにうまく活用し、アウトプットを出すかどうかが重要です。

私のブログは学問よりも実用性重視です!
とりあえずこの記事では、「ミーティング」と呼ぶことにします。そちらの方が印象が良いからです笑
さて、ここで思い出してもらいたいことがあります。
管理職の重要な役割は、「情報収集と提供」「意志決定」そして「ナッジング」である、とお話しました。
管理職っていったい何やってるのでしょうか?それは「情報収集」「意思決定」「ナッジング」です。 これってなかなかわかりづらいものなんです。それぞれを詳しく解説していきます。 管理職のアウトプットとは?
管理職がこの重要な役割を果たすための最も有効な手段こそ「ミーティング」です。
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』ではこの役割によって、ミーティングを下記のように分類しています。

ミーティングを分類して何か意味あるの?
その「目的」で分類することによって、それぞれのアウトプットがより理解しやすくなります。

私もミーティングの実用的なコツが説明がしやすい笑
ではそれぞれのミーティングについて解説します。
情報交換が目的のミーティング
このミーティングは、招集する側にとって重要でも、招集される側はめんどくさく感じる場合もありますね。
でも管理職はまわりの機嫌を取ることが本業ではありません。
自ら必要だと思うのなら、遠慮なく実施すべきです。

チームのためにも情報交換は積極的に!
ワン・オン・ワン(One on One)
これは部下との1対1のミーティングです。「個人面談」ですね。
ちなみに、あなたの職場ではやっていますか?
私の会社では、3か月に1回、部下とワン・オン・ワンをすることが義務付けられています。
これは、年間の個人業務目標の策定、実績のフォロー、半期ごとの業績評定のフィードバックなどが目的となっています。ついでに、いろんな困りごとや愚痴なんかも聞いたりします。
時間は管理職それぞれですが、私の場合は基本的には1人30分程度です。
ワン・オン・ワンはわりとどこの会社もやっていると思います。
ところが、『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』で推しているワン・オン・ワンは、週に1回、最低1時間という、なかなか過酷なワン・オン・ワンなのです。
時間がそれ(1時間)以下の場合に、部下が持ち出してくる問題は、すばやく取り扱える簡単なものにおのずと限定されがちである。

うーん、確かにそう思うけど・・・
私の部下は20名です。週に1回1時間だと・・・毎日4時間ワン・オン・ワンです。ムリムリ笑
週に一度であれば、1日1時間、まあ5人くらいが限界かな、とも思います。
私は週一ペースまではやる必要ないと考えています。
理由は2つ。
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』が書かれたのは1983年で、メールやパソコンの無い時代です。今とはコミュニケーションの方法がまったく違う時代です。
それと、著者のアンディ・グローブが働いていたのはアメリカのインテル社。私も勤務経験のあるアメリカ企業。管理職には個室が与えられることが多いです。当時は私も個室をもらってました。個室ではないにしろ、衝立(ついたて)で部下と仕切られているのが一般的です。
しかし日本の企業では、中間管理職は部下と机を並べて仕事をするケースが多いと思います。部下とも日頃から気軽に会話ができます。
日本の企業では、週一でひとり1時間のワン・オン・ワンというのはやり過ぎな気がします。
かしこまってワン・オン・ワンをやるよりも、普段から部下全員に気を配り、誰ひとり取り残すことないように日々全員と会話することを、私は重視しています。

とはいえワン・オン・ワンはかなり重要です
だから頻度を気にするよりも、その目的と正しい方法を理解することが先です。
まずワン・オン・ワンで大切なことは、この会議の主役は部下自身である、ということです。
議題を決めるのも、会話をリードするのも部下の役割です。そうなるように上司が働きかけるのです。
上司が自分のペースで一方的に話してはいけません。それじゃ意味がありません。

上司が気持ちいいだけ笑
議題は、とにかく重要なこと、部下を苦しめていること、なんかヤバくなりそうなこと、そんな話題を部下から引き出すのです。
ところがこれがなかなか難しい。

下手に相談すると宿題になって返ってくるから、あんまり上司に言いたくないな
そんな部下もいます。私も相手によってはそうです笑
経営学の巨匠、ピーター・ドラッカーもこう言ってます。
時間の使い方のうまい管理職は、自分の問題について自分のほうから話しはしないが、部下に問題をどう話させるかは知っている。
部下の抱えている問題を引き出すには、「なぜ?」を繰り返して、部下の仕事を深堀りしていくのがよい方法です。
しつこく「なぜ?」を繰り返していたら、ポロっと本音が出てくることがあります。それを見逃さずに、しっかりと拾うのです。
あるいは、「ああ、それってこういうこと??」と共感しながら、こちらからアプローチをかけてみるのです。

A社との契約資料の作成、進んでる?

まあボチボチです・・・

じゃあこの後すぐ見せてもらおうか笑

いえいえいえ、それは無理ですよ笑

なんで?いっつも仕事速いじゃん!
えらいよね~

でも今回はちょっと・・・

ははは、まあそんなこともあるよね笑
で、どしたの?

財務部からなかなか情報がもらえなくて・・・

ああ、はいはい、S課長でしょ笑
あのヤロー・・・

そうなんですよ!もう困った人で笑

俺から釘刺しとくよ 他に何かある?

そうそう、もうひとつ困ってて~・・・
殻に閉じこもっている部下も、ペラペラと話し出すことでしょう笑
私が管理職になったばかりの頃、ある先輩から教えてもらった言葉が、今も私のマネジメントの基本となっています。
見てほしい 聞いてほしい 知ってほしい
これは、部下の本音を表現していると言われています。たとえ上司に対して口数少ない部下だったとしても、心の奥ではこのように考えているんだ、と常に意識しています。
さきほどの私と部下の会話には、とても重要な部分がひとつ隠されています。お気づきですか?

なんで?いっつも仕事速いじゃん!
えらいよね~
これです。「見てほしい」に応えているのです。
世の中にはこれが欠けている上司が多いと思います。ロクに部下のことも見ていないのに、「なんでも話してくれ!」と、都合よくいい上司ぶってもダメです。
また見ていたとしても、それをちゃんと口に出してあげないとダメです。部下は上司にとって都合のいい超能力者ではありません。
部下を見てない上司に聞く権利はありません。部下も話す義理はないのです。

ワン・オン・ワンはその効用も大きいけど、
上司も試されるガチのミーティングです笑
職場内の定例ミーティング
これもどこの会社や組織にもありますね。
私の場合は、私の事業部に所属する管理職だけの定例ミーティングと、私のチーム内での定例ミーティングが、それぞれ毎週あります。
この定例ミーティングは、主催者、つまり出席者の中で一番偉い人の手腕が問われます。
ひどいのは、連絡事項を棒読みして終わるミーティングです。そんなのはメール送れば済むことですね。

でもよく考えればこんなダメなパターンって多くないですか?
もちろん連絡事項を口頭で通達するのが大切なケースもあります。伝えた後のみんなの反応が見たい場合です。これはメールを送り付けるだけではできません。
少しでも様子が変わった人がいれば、すぐさまその場で意見を求めることができます。
個人的にチームミーティングの一番の楽しみは、部下や同僚の意見がぶつかり合うシーンが見れることです。
積極的に部下が発言し、それに対してまた他の部下が発言するように、司会進行し煽るのです。
もちろん、本気のケンカになってはいけませんから、そうならないような仕切りも必要です。

消火器を準備しつつ、炎上させるのです笑
最後はキレイにまとめて、ミーティングを時間通りに終わらせる。これも司会者の仕事です。

バラエティ番組の司会者みたいなもんですね
でもこの扇動するスキルは管理職にとって重要です
他部門との定例ミーティング
この会議も、まあどこの会社でもよくある会議ですね。
自部門の定例会議と比べると、盛り上がりに欠けることが多いです。
他部門の人相手には、お互い遠慮してしまうからです。
ただ、管理職の情報収集という目的においては、職場のミーティングよりも得るものは多いです。
管理職は自部門のことだけではなく、つねに会社全体の状況を気にして行動しなければなりません。
他部門とのミーティングではその仕事内容について理解できるだけではなく、他部門の上司と部下の人間模様もよくわかりますし、何より、普段あまり接することのない他部門の人たちのキャラや力量がわかるのです。

(この人、使えそうだな・・・仲良くしとこ・・・)
私は会議中によくそんなことを考えています。
特に経営者に近い部門の人、たとえば経営企画部みたいな部門の人からは、思わぬ裏情報が得られることも少なくありません。

そんな情報を自部門に「おみやげ」として持って帰るとよろこばれます
「One Team」という言葉
少し話が脱線するかもしれませんが・・・
私の場合は、他部門とのミーティングではあえて高圧的な態度を取ることが多いです。あくまで計算の上で、です。
目的は、自分の部下が仕事しやすい環境を作るため、それと、会社の文化を変えるためです。
私の職場は日頃社内外の多くの人といろんな交渉をしておりますので、私の部下はみんな口が達者で優秀なビジネスパーソンです。
その結果、何が起こるかというと、他部門の人からいろいろ困りごとを頼まれてしまうのです。とりあえず青葉さんのチームに相談すればなんとかしてくれる、そんな空気があります。
One Teamという言葉がありますよね。どこの会社でもよく聞かされる言葉です。
うちに困りごとを持ってくるときに、みんな必ず言うのです。

One Teamの精神でご協力お願いします!
もちろん私だってOne Teamの精神で働いています。
ところが・・・自分の責任を果たさずにして、うちに助けを求める部門が多いんです。

じゃあこれとこれ調べてからうちに持ってきてください
じゃないとあんたの部門がどうなろうと会社がどうなろうと知ったことか
当然これは演技です。私は他部門のことも会社のこともとても心配しています。
でも私が最も心配しているのは、One Teamという美しい言葉の元に部門間に甘えが生じることなのです。
もちろん自部門の役割をきちんと果たした上で相談された場合は、全力でサポートします。
むしろ、自分の仕事よりもそちらを優先させます。これぞギブアンドギブの精神。

会社のために狂気を演じる勇気を持とう笑
意思決定が目的のミーティング
いわゆる、みなさんが「会議」という言葉から想像する「会議」のことです。
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の定義では、このミーティングは定例ではなく、何か特別な目的のために臨時的に開催されるミーティングとなっています。(もちろん、意思決定することを目的とした「定例」ミーティングも、組織によってはあると思います)
例えば、トラブルが発生したときの緊急対策ミーティングですね。
このミーティングでは情報交換もしますが、とにかく意思決定することが最終目的となります。
どんなミーティングよりも、司会者の手腕が問われます。多くの参加者は、自分の意見を押し付けたい、責任逃れしたい、など様々な思惑を持って参加しているわけです。
意思決定をするミーティングなので、出席者もそれなりの役職者が出てきます。彼らの時給を考えれば、かなり高コストな会議です。
司会者は、その目的をしっかり理解し、議論を仕切らなければなりません。1秒足りとも無駄にはしたくないですね。そして1回で終わらせること。
参加者を選定するのも司会者の役割になります。その問題がどういうものなのか、どこの誰を呼べば十分な情報が集まり意思決定ができるのか、をしっかりと考えなければなりません。
目的や議論の内容も考えずに、とりあえず声かけてみよう、と集められたメンバーでは、ミーティングの目的を達成することはできないでしょう。
「みんな宿題を持ち帰って、もう一度集まりましょう!」となるのがオチです。

だからこんな会議の司会は部下に任せずに、
上司自ら手本を示すのがおススメです!
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』にはこのように書かれています。
理想的に言えば、臨時の突発的な意思決定のためのミーティングは招集しないにこしたことはない。万事がスムーズにいっていれば、定期的なミーティングですべて面倒を見られるはずである。
ピーター・ドラッカーは、時間の25%以上を会議で過ごすようなら、それは組織不全の兆候だと言っている。私ならこう言いたい。
「組織不全の真の兆候は、人が25%以上の時間を、臨時に開かれる意思決定が目的のミーティングで過ごすときに現れる」と。
この「意思決定が目的のミーティング」は必要悪だと言っているわけです。無いに越したことはないと。
日々環境が変化するビジネスの現場では、それはキレイごとにしか聞こえませんが、発生が予測される課題は日常業務の中で予測し、日常業務の中で消し込んでおくのが理想ですね。
つまり「業務の平時化」です。
平時化できる仕事はどんどん平時化してリソース(人、モノ、金)のムダを減らし、浮いたリソースは会社の重要課題に振り向けていくべきなのです。
高コストな「意思決定が目的のミーティング」にかける時間はなるべく減らし、偉い人にはもっと前向きな仕事に注力してもらうべきです。

そのためには中間管理職の存在、その力量に頼るところが大きいのです
(次回につづく)
意思決定は管理職の重要な役割ですが、「地位のパワー」を持っている管理職とはいえ、「知識のパワー」は日々衰えていきます。意思決定するときは「足らずを知る」ということが大切です。 議論が平行線になるような難しい会議の場では、バカだと思われることを恐れずに強権発動してでも意思決定をしなければなりません。そして、全員から賛同を得ようとするのではなく、全員から「決まったことへの支持」を取り付ける。これが管理職の意思決定における「覚悟」なのです。
この記事があなたのお役に立てたなら「いいね!」よろしくお願いします(^^)