部下から最高のアウトプットを引きだすことは、管理職の極めて重要な役割です。
アウトプットが引き出せない理由は2つしかありません。
やる気がないか、できないか、です。
つまり、モチベーションが低いか、能力が低いか、ということです。
この記事では、部下のモチベーションについてお話したいと思います。
人にやる気をおこさせたい、モチベーションを上げたい、という思いは、何も会社に限ったことではありません。
親や教師であれば、子供や生徒に勉強へのモチベーションを上げたいものです。
が、会社では少し事情が違います。管理職はそこを理解しておかなければなりません。
課長!私、すごく仕事にやる気が出てきました!
上司としてはとてもうれしい言葉です。自分がいいことしたみたいで気分がよくなりますね。
でも、部下のこんな言葉には何の意味もありません。
もちろん私もこんなこと言われたら思わず笑顔になるでしょうし、うれしい気持ちにはなります。
でもそれで勘違いしてしまってはダメなのです。
そもそも彼女が「やる気が出てきた!」と言っても、それは彼女自身が会社とは関係ない何かしらの理由でそうなっただけかもしれません。(新しい恋人ができたとか)
人のモチベーションというのは、その人の気持ちから生まれてくるものです。
管理職とはいえ、人の気持ちをコントロールすることは非常に難しいのです。自分の家族や親友ならまだしも、会社内の上司と部下の関係であればなおさらです。
メンタリストや心理学者レベルの技術があれば別ですが。
「モチベーションあげていこう!」とか「仕事を楽しみましょう!」なんて呼びかけるだけで、部下のモチベーションが上がると思っている管理職はいかがなものでしょう。
私の上司もちょっとこの辺を勘違いしているタイプで、会議中にも「こういう仕事は経営企画の醍醐味だな!楽しいよな!な、楽しいよな!」と部下に連呼します。
私はただ苦笑するだけですが、若い連中は困惑しながらも「は、はい・・・楽しいです・・・」と無理やり言わされています。
それで上司は「だろ?そうだろ?うんうん!」とご機嫌になる訳です。部下も気の毒に笑
マインドコントロールの技術を持たない普通の管理職が、部下のモチベーションを上げるためにできること。
それは、部下がモチベーションを生み出せる環境を作ることです。
そうやってつくった環境によって部下がやる気を出し、それが会社の業績につながれば、管理職として仕事をしたことになるのです。
もちろん管理職も普通の人間ですから、部下の笑顔は見たいですよ。その努力をすることを否定はしません。
でも、それだけで満足してしまってはダメなのです。
モチベーションの話になると、よく出てくる鉄板ネタが「マズローの欲求5段階」です。
あまりご存知ない方のために、簡単に解説します。
① 生理的な欲求(生活に必要なモノへの欲求)
② 安定への欲求(手にしたものを守りたい欲求)
③ 帰属への欲求(どこかに所属したい欲求)
④ 承認への欲求(誰かに認められたい欲求)
⑤ 自己実現への欲求(自分をもっと高めたい欲求)
「自己実現への欲求」のレベルまで到達すると、この欲求はもう永久に満たされることはなく、人間を無限の向上に駆り立てていく
後にマズローは、⑥自己超越の欲求(社会や他人に貢献したい欲求)を追加しています。
SDGsへの取り組みやボランティア活動なんかが、この「自己超越の欲求」に該当すると思います。
管理職として部下に望むのは、当然ながら最上位にある「自己実現への欲求」レベルへの到達です。
ここまで来たら、もう放っておいてもバリバリと仕事をこなしてくれそうですね。
「自己実現への欲求」に到達した人は、更なる高みに向けて無限の欲求を持ちます。
それは、スポーツ選手が更なる高い目標を目指すのと同じことです。
打率2割のバッターは3割を目指し、3割のバッターは4割を目指します。
もし4割を実現できたら、次は5割を目指すでしょう。
10割を実現できたら??
きっと全打席ホームランを狙うでしょう。(大谷翔平なら狙うでしょう)
ここで大切なのは「達成感」です。
打率2割のバッターは、いきなり10割は目指せません。無理に決まってます。やる気もおきません。
だから、まずは3割を目標にして努力します。3割に到達したら達成感を味わい、今度は4割を目指すモチベーションがわいてくるのです。
だから、部下には仕事の目標を与えるのです。
部下に目標を与える、持たせることは、部下がモチベーションを生み出せる環境をつくることそのものであり、管理職の重要な仕事のひとつです。
部下に与える目標の高さについては様々な意見がありますが、私は「今できることの2倍」「達成できる可能性が五分五分」が妥当だと考えています。
仕事の目標設定でいつも悩むこと。「目標は高い方がいいのか?低い方がいいのか?」この答えは、会社の目標、部門の目標、個人の目標によって変わってきます。実際に会社の経営目標を設定している筆者が実践事例を紹介します。
到底不可能な高い目標を部下に与え「とにかく頑張れ!それで鍛えられるから!」なんて言う人もいます。
こういう指導方法を否定はしませんが、私はこういうやり方はしません。
達成できるわけない目標に対して、やる気なんてそうそうおきませんから。
よほど上司がみんなに好かれていれば、「この人のために頑張るか・・・」くらいの気持ちはあるかもしれませんが、それは「自己実現の欲求」ではなく、下のレベル「承認への欲求」「帰属への欲求」でしかありません。
それに、部下が目標が達成できなかった場合、そのツケは誰が払うのでしょうか?
会社であれば、そのツケを最終的に払うのはお客様です。
そうなってしまったときの部下の気持ちをどう考えるのでしょうか?
私は無責任な根性論は好みません。
五分五分の目標を与えたら、目標達成に向けて努力する部下をしっかりと観察しながら、適宜サポートをすればよいのです。