「トヨタ労使懇談会2023」の動画がYoutubeのトヨタイムズで公開されました。
30分程度の動画ですが、こちらを「ビジネスパーソンとして何が学べるか」という視点で、5分程度で読めるように要約してみました。
この労使懇では、ビジネスの世界における失敗と挑戦について討議されています。
組合から経営メンバーに提起されたテーマは「失敗を恐れずにチャレンジできる職場風土」でした。
失敗をしてしまった場合は、当然ながら再発防止策を取るものですが、これが過度なリスク回避意識を生み、挑戦を妨げているという問題が浮かび上がりました。
多くのビジネスマンが失敗を恐れ、チャレンジに二の足を踏んでしまう状況はよくあることですね。
中嶋副社長は、現場の声を聞くことの重要性を強調し、チャレンジへの理解が従業員の間で広がっている一方で、失敗を恐れる要因が存在することを指摘しました。
多くの従業員が、失敗することで他者に迷惑をかけることや、叱責されることを恐れているのが現場の実態なのです。
しかし、重要なのは、失敗を経て何を得るかです。
多くの優秀な従業員は、みんな上司から失敗を許されつつ成長してきたんだ、と強調していました。
失敗を通じて得られるものは、自己の成長であるという点です。実際、成長を感じる失敗は、本当の意味での失敗ではないかもしれません。
個人的に一番印象に残ったのは、宮崎副社長のお話でした。
組合からは、経営メンバーに対してチャレンジしたことへの評価やフィードバックを求める声も出ていました。
この点に対して、開発現場の菅原統括部長は、失敗を通じての成長やキャリアの発展の重要性を強調しました。チャレンジを支援し、評価する姿勢が必要なのです。
失敗や苦労は、必ずしも否定的なものではありません。
成功には失敗がつきものであり、それが成長につながるのです。
北米本部の小川本部長は、ベンチャー投資会社の例を引用し、チャレンジに背中を押す言葉を贈りました。
彼は、北米トヨタのように組合が存在しない状況で、上司が唯一の相談相手であったと述べ、コーチングの重要性を強調しました。
コミュニケーション能力の向上と実践が重要であり、失敗を恐れず、挑戦に臨む姿勢が必要なのです。
また、失敗の定義についても議論がありました。
失敗は再発防止や修正が必要な場合にのみ起きるものではなく、計画が実行されなかった場合や状況が変わった場合にも発生します。
自動車業界が100年に一度の変革期にある現在、ビジネスは予測不能な要素が多く、計画通りに進むことは稀です。
したがって、失敗の定義を見直し、できないことを理解することも必要となってきています。
失敗を恐れる一因として、余力不足や人事評価の問題も浮かび上がりました。
あまりに仕事が忙しくて、失敗から学ぶ余裕がない環境では、失敗を避けることが当然の選択肢となります。
人事評価では成功が評価されることが多いため、挑戦への恐怖心が生まれます。
この問題に対処するためには、人事評価制度の見直しや、挑戦の成果を評価する仕組みの構築が必要です。
さらに、ツールやプロセスの改善も重要です。過剰な再発防止策によって、仕事が遅れたり止まったりしてしまう状況は避けなければなりません。
トヨタの強さは問題解決と改善の文化からきており、問題を解決する方法を共有し仕組み化することに長けた会社です。
しかし最近では、この文化が過度に再発防止に焦点を当ててしまっていることも否めません。
したがって、再発防止の仕組みを見直し、適切な改善プロセスを構築する動きを始めなければなりません。
この労使懇談会における討議内容のポイントは以下10点であろうと思います。
「失敗を恐れない職場風土」を実現するためには、従業員本人が意識を変えるだけではムリな話であり、会社の仕組みやツール、また上司の考え方もセットで変えていかなければならない、ということが理解できますね。