よく一緒に仕事をしている部門あるのですが、その部門が崩壊の危機。
次から次へと社員がメンタルをやられて倒れているのです。
当然仕事はまわらなくなってしまい、そこの部門長も精神的にギリギリの状態。
つい先日、車をぶつけたそうです。
壁にこすった程度でまだよかったのですが、仕事のことを考えていてボーっとしていた、と本人言ってました。
確かにこの部門、最近忙しくて業務負荷が高い状態にはなってました。
多くの部下はテレワークをしており、平時に比べるとコミュニケーションも取りづらくなっていたことも事実です。
でも、この惨状はなるべくしてなったと私は感じています。
この部門長(Aさん)、私と同格ですが少し年上の先輩です。
人当たりもよく温和なキャラで、いわゆる「いい人」です。
ですが・・・彼の職場はいわゆる「ブラック職場」と化しています。
残業時間が圧倒的に多く、それでも成果が出ない。
上からいつも叱られています。
私も一緒に仕事をしていて困ることがしばしば。
このAさんには4つの問題行動が見受けられます。
私が一番困っていたことは、「Aさんとなかなか話ができない」ということです。
連携して仕事をしている部門なので、お互い部門長同士、日々何かしらのコミュニケーションが必要です。
ですが、このAさんは毎日朝から晩まで会議の予定が詰まっていて、なかなか会話ができないのです。
呼ばれた会議にはすべてホイホイと顔を出し、また自分自身も何かあるとすぐに会議を招集します。
だから電話をしても出れない、メールやチャットの返信も遅い。
Aさんの部下もいつもAさんと一緒に会議に出ているのでなかなか連絡が取れません。
私はせっかちです。すぐに話をしてすぐに動きたいタチなので、毎日イライラさせられています。
彼の部下も同じフラストレーションを感じていることは容易に想像できます。
なかなか捕まらないAさんですが、やっと空き時間が見つかったとします。
私はソッコーでAさんに会議招集をメールで送ります。
「Aさん、○○の件についてちょっと相談させてください」
ふたりで5分10分電話で話せば済む用事ですが、彼の時間をあらかじめ確保しておかないと、電話してもなかなかつかまらないからです。
最近はうちもWeb会議がメインになっています。
時間になってWeb会議が始まりました。
さてAさんと話をしようかと思って画面を見たら・・・10人以上の人がズラズラと参加しているのです。
彼は私からの会議招集を部下全員に転送していたのです。
Aさん自身が会議招集する場合も、関連部門や部下にとにかくバラまきます。
なぜ自分が招集されたのかもわからない参加者は、積極的に発言などしません。
ほとんどの参加者は黙って様子を見守るだけです。
部下の貴重な時間をどれだけ奪っているのでしょうか。
大勢の関係者が参加している会議では、Aさんはほとんど発言しません。
部門長として参加はしていますが、彼の部下ばかりが発言しています。
部下がピンチに陥っても沈黙。
たまりかねて私が助け舟を出すこともしゅっちょうありました。
会議の間、Aさんは何をしているかというと、議事録を一生懸命書いているのです。
彼も優秀だったから部門長にまで出世した人間。議事録は一級品です。
でも、他部門の偉い人に攻撃されている部下を見捨ててまで、部門長が議事録を書く必要なんてあるのでしょうか。
Aさんの部門と何か仕事をするときに、双方で役割分担を決めることもあります。
そんなシーンでのAさんの第一声は必ずこれ。
「その仕事は○○さんにやってもらおうかな、いや△△さんかな」
Aさんは「仕事を割り振ること」が管理職の役割だと言わんばかりに、仕事そのものの話には一切触れずに、ひたすら誰にやらせるかばかり考えるのです。
たまに私もイラっとして言い返します。
「それは部下に投げるんじゃなくて、Aさんが自分でやることでしょ」
これらAさんの問題行動ですが、その要因はこれ。
頼まれたら断れない人は「いい人」です。
でも、頼まれたら何でも引き受けてしまう、呼ばれた会議にホイホイと出てしまうことは、ビジネスにおいては「よい結果」にならないこともあります。
自分の力量や役割を自覚した上で「断るやさしさ」もあります。
「やるべきことをやる」のに一生懸命な管理職は多いですが、「やらなくていいことをやらない」のに一生懸命な管理職って少ないですね。
部下に「あれもやれ、これもやれ」と言う上司よりも、「これはやらなくていい」と言い切れる上司になりたいものです。
会議にズラズラと部下を引き連れていくのは、「ワンチームの精神」でみんなで課題を共有してチームで対処するんだ、と言えるかもしれません。
でも管理職が自分の役割を理解せずに、何も考えずに部下を巻き込んでしまっては、「ワンチームの精神」は機能しません。
守備位置が決まってないのに野球をするようなものです。
美しく正しい「ワンチームの精神」。でも会社や組織では、ただの精神論になりがちです。「ワンチームの精神」がその真価を発揮するには「ひとつだけ必須の条件」があります。これを理解していないと、「ワンチームの精神」はただの精神論で終わってしまうのです。
管理職の仕事は「人を使って成果を出すこと」です。
部下に仕事を割り振って指示するのは管理職の役割です。
でも、誰に何を任せるかを考える前に、その仕事をどうやって進めればうまくいくのか、をイメージしなければなりません。
管理職としての役割を認識せず、何のイメージも持たずに部下に指示するのは、ただの「丸投げ」ですね。
部下との信頼関係も悪化しますし、何よりロクな成果も出せないでしょう。
あなたも今日一日を振り返ってみてください。
一般社員であれば、自分にしかできない仕事に多くの時間を使っていると思います。
一般社員の仕事は細分化され、専門性が高いからです。
では管理職の方はいかがでしょうか?
管理職にも管理職にしかできない仕事があります。
意思決定や他部門との合意形成などなど。
一般社員も管理職も1日は24時間しかありません。
管理職は限られた時間を、自分にしかできない仕事に充てる努力をしなければ、組織の生産性は落ち、雪だるま式に増えくる仕事を抱え込むことになります。
Aさんの部下たちは、毎日こんな状況にありました。
倒れる人がいない方が不思議です。
管理職は毎日この問いかけを自分自身に向けるべきなのです。