営業の連中は何考えてんだ!?
また経営企画部が無茶言ってきやがった・・・
会社の中ではよく聞こえてくる声ですね。
あなたの会社では、対立する組織ってありませんか?
人間関係は良好でも、仕事となると組織間で対立するようなケースって、どこの会社でも見られる光景です。
組織が大きければ大きいほど、そういった対立構造ってあるのではないでしょうか?
今日は、
犬猿の仲の部門が仲良く仕事するにはどうすればよいか?
私の実体験をお話します。
私の会社でよく見られる対立は、
ライン部門とスタッフ部門の対立
です。
ライン部門、スタッフ部門という言葉、あまり聞きなれない方もいると思いますので、超簡単に解説します。
たとえば、営業部門です。
営業部門には営業担当者が所属しており、実際に営業活動を行っています。
製品を販売することで利益を生み出しています。
生産部門(工場)もライン部門のひとつです。
作業者は実際に製品を作っています。製品という「価値」を作り出すことによって、会社の利益を生み出しています。
たとえば、人事部や総務部などです。
人事部や総務部は、直接には利益を生み出しません。でも、利益を生むライン部門をサポートすることによって、間接的に利益を増大させます。
社長を直接サポートする経営企画部みたいな部門もスタッフ部門です。
直接利益は生み出しませんが、経営をサポートするという意味で重要な仕事ですね。
どうでしょう?
ライン部門とスタッフ部門の違い、なんとなくイメージできましたか?
軍隊に例えれば、最前線で敵と戦うのがライン部門、後方に陣取って作戦を考えるのがスタッフ部門です。
ある程度大きな企業になると、もう少し組織構造がややこしくなってきます。
ライン部門である営業部門の中に、営業管理部とか営業企画部なんて営業のスタッフ部門があったりします。
これら営業のスタッフ部門は、営業担当者をサポートすることに特化したスタッフ部門です。
うちの会社では、ライン部門とスタッフ部門がよく対立します。
私の会社で起こった事例をご紹介します。
実際の組織名称や仕事の内容はちょっとややこしいので、シンプルにしてお話します。
私の会社はとある製品を作って販売しています。
製品というものは、適当に作って適当に売っても利益は出ません。
新製品を発売する前は、製品の販売価格をいくらにするのか、製品を作るのに必要な製造コストはどのくらいにするのか、をしっかりと考えます。
「この製品は1000円で販売しよう!製造コストは700円におさえて、300円の利益を出そう!」
って感じですね。
これは会社にとってはとても重要なことなので、経営会議や役員クラスが出席する会議で議論されます。
ところがですね、この製造コストってやつがなかなかやっかいなんです。
1000円で販売したいと思っていても、作ってみたら製造コストが1500円かかりました、なんてことがあるんです。
だからといって、700円の製造コストで無理やり作ってみても、
「こんな安っぽいのは1000円じゃ売れない!」
となるわけです。
だから、製品開発部門や材料調達部門はヒーヒー言いながら製造コストを下げる努力をします。
安い材料で試作品を作ってみたり、材料の販売会社と価格交渉したり・・・と懸命に働くのです。
そんな製品開発部門や材料調達部門は、ライン部門です。うちの会社では、”現場” と言ったりもします。わが社の製品と利益に直結する仕事をしています。
新製品を開発しているときには、経営者から日々プレッシャーをかけられます。
「今の製造コストはどのくらいだ?」
「発売日までになんとかなるのか?」
「いつまでに製造コスト目標を達成できるのか?」
まあ、どこの会社でも同じでしょうね。
こんな経営者とライン部門の間に入っているのが、製品企画部(仮称)です。
製品企画部は、経営方針や企業戦略を受けて、製品の販売価格や製造コストを考える部門です。
製品企画部の提案は、経営会議によって議論され意思決定されます。
よって実際の仕事としては、経営会議で使う資料の準備、現場の状況調査、経営者の指示をライン部門に伝えることになります。
経営企画部の仕事は、わが社の製品やその利益に直結してはいません。
実際にやっていることは情報収集と資料作成がメインなので、製品企画部はスタッフ部門です。
製品企画部は、あれやこれやと現場に指示をしてきます。
「経営会議があるから、今の製造コストの状況を教えてください」
「製造コストを改善する計画を明日中に提出してください」
会社の利益に直結するライン部門は、製造コストを下げるために毎日忙殺されています。
そんなときに、資料作りの情報をくれ、と言われても、
「忙しいから後にしてくれ!」
と言いたい気持ちになります。
とはいえ、経営者の指示ですから断るわけにもいかず、イライラしながらも対応します。
ここまではいいんです。
製品企画部も経営者と現場の板挟みになりつつ、自分のやるべき仕事をやっているのです。そこはライン部門のひとたちも理解しています。
腹が立つのはここからなんです。(ちなみに私はライン部門所属)
ライン部門とスタッフ部門が大ゲンカを始めるのはこんなケースです。
翌日
スタッフ 「この資料じゃダメだ、って社長に言われました。やっぱりこっちの資料を作ってもらえませんか?今日中に。」
ライン 「はぁ!?ふざけんな!」
あなたの会社でも似たようなことがあると思います。
ライン部門のスタッフ部門に対する不信感は高まるばかり。
一方、スタッフ部門はライン部門と経営者の板挟みで胃がキリキリ。
なぜこんなことが起こるのでしょう?
私の会社のケースではライン部門とスタッフ部門、それぞれ問題があります。
まずスタッフ部門。
とにかく言われたことだけ淡々とやる人が多い。
ビジネスパーソンというよりは、単なる集計作業者や資料作成者。
本来スタッフは”作戦参謀”であるべきです。単なる経営者の使い走りではいけません。
経営者が正しい判断を適切なタイミングでするために、必要な情報を揃えて、アドバイスをするのです。
そしてライン部門が困っていることを吸い上げて、どんなサポートが必要か考えて、経営者に提案するのです。
そこを先回りして考えなければなりません。
組織が大きくなると経営者も事細かに指示は出せません。指示に抜けやモレだってあります。
そこをカバーするのがスタッフの役目なのです。
スタッフは経営者とライン部門の板挟みになり、やがて萎縮してしまい、思考回路を停止します。
そうなると会社はおしまいです。
ライン部門にも問題があります。
ライン部門は、いわゆる花形職場とも言えます。まさに企業の最前線で利益を生み出している職場です。
だから熱意とプライドを持って仕事をしている人が多いです。
それはよいことですが、裏方であるスタッフ部門を見下している人が多いのも事実。
「現場は忙しいのに情報収集ばかりしやがって!」
「資料ばっか作って金になるのか!」
そんなことを言う人も少なくありません。
そして、スタッフからの指示は、やっつけ仕事として、何も考えずに右から左にさっさと流してしまいこともあります。
ひどい場合は、余計な突っ込みをされないように、悪い情報を隠して報告したりします。
スタッフ相手に時間を割くより、目の前に転がっている仕事を片付けて、とにかく利益を上げたいのです。
しかし経営者に直結したスタッフ部門に、このようないい加減な対応をして、経営者が正しい意思決定をできるはずはありません。
スタッフ部門は、ライン部門を適切にサポートすることもできず、結局ライン部門は自分で自分の首絞めるのです。
スタッフ部門は、経営者とライン部門を直結する重要な部門です。また、経営者に一番近いところで働く企業の中枢です。
板挟みになるのはつらいこともありますが、それが仕事なのです。
でも利益を生まない部門だからと、卑屈になって萎縮することはありません。
ライン部門が筋肉なら、スタッフ部門は筋肉を動かす頭脳であり神経なのです。
スタッフ部門の存在なしには、ライン部門は何もできないのです。
だからこそライン部門にナメられてはいけません。
現場の仕事をしっかりと勉強し理解なければいけません。
経営者の考えを”先読み”して、正しい情報を準備し提供しなければいけません。
そして経営者の指示はしっかりと腹落ちさせて、自信を持ってライン部門に展開すればいいのです。
中途半端な展開をしたら、ライン部門を間違った方向に走らせてしまいます。
「筋肉」であるライン部門は、筋トレするのもよいですが少しは頭も使いましょう。
スタッフが中途半端な指示をしてきも、それを流さずにちゃんと現場の声を伝えなければなりません。
だって、現場のことはスタッフよりもラインの方がよく知っているのです。
現場を知らないスタッフを指導するくらいの気概を持ちましょう。
そして隠し事をしてはいけません。悪い情報ほど早く上にあげるのです。
経営者が最悪の事態を回避できるように、早めに舵を切れるように、現場の情報を伝えてください。
スタッフはラインの敵ではなく味方なのです。
これはうちの会社の悪いところですが、エース級の社員はライン部門に配置される傾向があります。
ライン部門で出世が止まった管理職が、横スライドでスタッフ部門に異動することもよくあります。
結果的にライン部門出身者が社内で要職を占めることになります。
ライン部門出身者が支配しているので、エース級の人財はすべてライン部門が持っていきます。
ライン部門とスタッフ部門のパワーバランスが崩れているのです。
こうなると、スタッフ部門の弱体化、萎縮が止められません。
それは、会社そのものの弱体化なのです。
会社は、ライン部門とスタッフ部門の両方をバランスよく経験できるように、人材育成を考えるべきです。
何も、人事や総務と、営業や工場で人を入れ替えろといっているわけではありません。
人事や総務の中にもライン業務はありますし、営業や工場の中にもスタッフ業務はあります。
社員の専門性と、高く幅広い視点をバランス良く育成するのです。
また、成果がわかりやすいライン部門だけが評価されるのではなく、スタッフ部門が正当に評価される人事考課の考え方が必要です。
筋肉と頭脳のバランスが取れてこそ、企業は最大のパフォーマンスを発揮できるのです。