仕事柄、世界中の多くの経営者の方とお話したり、企業を訪問することがあります。
経営者の方からは、いつも本当に多くのことを学ばせていただいており、雇われサラリーマンでありはますが、私自身のビジネスにとても役立っています。
でも、特に強く印象が残るのが「オーナー社長」の会社です。
そんな私の思い出話です。
※「オーナー企業」にも、ソフトバンクのような雇われ社長の会社もあれば、ファーストリテイリング(ユニクロ)のようなオーナー社長の会社もあります。
オーナー社長の会社を訪問したとき、たまに驚かされることがあります。
「え?この企業規模で、こんな豪勢な本社ビル??」
あくまで私の感覚ですが、このくらいの事業規模ならだいたいこんな本社、というイメージがあります。
私は多くの企業を訪問していますので、そのイメージが大きくはずれることはあまりありません。
ところが、あまり儲かっていない、あるいは、数年先が読めない経営環境なのに、
東京都心の一等地にオフィスを構えている
地方の田園地帯にポツンと大きな本社ビルがそびえ立っている
というケースもよくあるのです。
一般的には、経営悪化で本社オフィスを家賃の安いエリアに移すケースなどはよくあります。豪華な建物でも、実はリースだった、という話もあります。
きっとこの豪勢な本社は、オーナー社長にとってお金に換算できない大切なものなんだろうと思います。
サラリーマンが意思決定するときは、やはり数字が重要になってきます。株主という人のお金を使って会社を経営しているからです。物事を判断するときには、財布の中身を無視することはできません。
そんな私は、不釣り合いに豪勢な社屋に対して、どうしても違和感を覚えてしまうのが本音です。
これは何が正解というものではありません。経営者の理念や思いそのものです。
「この展示している絵はおいくらですか?」と聞いてみたい衝動に駆られますが、一介のサラリーマンが、そんな質問を経営者にするのは不躾ではないかと思うのです。
日本企業の海外拠点を訪問した際、
「うちは30年前からこの国に進出してます!」
と話を聞くことがあります。
その業界の中で、抜きんでて早くから海外進出している企業。
これもオーナー社長の会社が多いです。ユニクロなんかもそうですね。
オーナーの意思決定ひとつで、リスクテイク。
まさにオーナーの英断です。
海外進出するときは、石橋を叩きまくるのが一般的な企業だと思います。
利害関係者への説明や了解を得たり、競合企業の動向を探ったり、時間はかかります。
やっと進出してみたら、まわりは日本の競合企業だらけ、ということもあります。
また、日本企業は海外進出しても、同じ日本企業を相手に取引するケースが多いです。
護送船団方式で、大手企業が海外進出するのに合わせて、その取引会社や関連会社も一緒に出ていくパターンです。
ところが、オーナー社長の会社は、単身乗り込んで、進出先の現地企業と盛んに取引をしているケースがよくあります。
開拓者です。
もちろん、早くから海外進出して失敗、撤退した企業もたくさん見てきました。
でも、単身乗り込んで、現地で成功を収めている会社は、本当に貴重な存在で、うちも積極的に仕事を出して、多くのことを学ばせてもらっています。
オーナー社長の会社は、経営手腕による成否がわかりやすいです。
オーナー社長の会社では、製品やサービスのラインナップがかなり偏っているケースが見受けられます。
オーナーの意志が色濃く反映されているのでしょう。
よそと同じものを作ったり、同じようなことをやっていては価格競争に巻き込まれますし、かといって尖り過ぎると当たりはずれが大きい。
あくまで個人的見解ですが、日本のBtBビジネスにおいては、あまりにも偏ったビジネスをしている企業は要注意だと思っています。
日本の企業は「長期安定取引」を重視する傾向があります。
扱い製品のライフサイクルの長さにもよりますが、例えば自動車であれば、一度世に出せば、10年20年は同じ部品をずっと供給し続けてもらう必要があります。
部品メーカーがつぶれてしまっては、お客様が車の修理をするときに部品が手に入りません。
また、長期安定取引を前提として、複数の企業が集まって技術やサービスの開発をすることもあります。このような「系列」によって、技術を囲い込むことは、一長一短ありますが・・・
もちろん、オーナー社長の会社には、どんどん新しいことに挑戦していただき、イノベーションを起こすことに期待していますが、「長期安定」というベースがあってのことです。
挑戦と長期安定の”さじ加減”が、まさにオーナー社長の手腕の見せ所であろうと思います。
尖っている分、不況には強いと言われているオーナー企業ですが、両刃の剣でもあります。
ビジネスを検討する際は、オーナー社長の経営理念やキャラを慎重に見極めることが重要なのは当然ですが、社長本人だけではなく、社長を支える経営陣や管理職、従業員、社風をチェックすることも極めて重要です。
天才的な経営者はごく一部の人だけであって、オーナー社長には、家業を継いだだけの人もいます。
いわゆる「番頭」と呼ばれる取り巻き経営陣の手腕が問われる会社もあります。
また、天才的な経営者だったとしても、病気や事故というリスクもあります。オーナー社長が突然身を引いたとき、この会社がどうなるのか?
そこも見極めなければなりません。
すべてはお客様のために、です。
私はひとりのビジネスマンとして、オーナー社長を尊敬しています。
お気楽サラリーマンには想像もつかない努力を重ねて会社を経営されているのです。
常に孤独と戦い、明日どうなるかもわからない日々の中で会社を運営しているすごい人たちです。
私は大企業のサラリーマンではありますが、会社の規模に関係なく、オーナー社長への敬意を決して忘れないようにしつつも、リスクと可能性をしっかり見極めながら、Win-Winとなる関係を作っていくことが大切だと考えています。