ビジネスパーソンに、ぜひ活用していただきたい格言。
それが三識(知識・見識・胆識)です。
ただの格言なので、意味だけ知っていれば十分ですが、ビジネスの現場においては、この考え方が非常に役立ちます。
ただ言葉の意味を知るだけではなく、ぜひ活用していただきたい格言です。
つまり、「知識」として知っていただくだけではなく、「見識」「胆識」として、あなたに活用してもらいたい、ということです。
日本の陽明学者、安岡正篤氏(1898~1983年)の言葉です。
この安岡正篤氏、いろんな逸話のある方です。
政財界の大物たちが師と仰ぎ、日本の歩んできた道に大きな影響を与えた人物です。
しかも、「平成」の元号考案者だとも言われています。(諸説あり)
ではあらためて、それぞれの意味を詳しく解説します。
本を読んだり、ネットを見たりして、頭にただ記憶されるだけの情報を意味します。
安岡先生曰く
知識というものは、薄っぺらな大脳皮質の作用だけで得られます
頭に記憶された知識が、個人の経験や考え方、人格によって見識へと変化します。
つまり、ただの知識が自分なりの理解や判断につながると、見識になるということです。
例えば、
高齢者ドライバーの事故が多発している
というニュースを見たとします。
これは聞いただけの知識です。
うちの父親もそろそろ免許返納とか考えないといけないな
と考えた場合、これは見識です。
頭に入ってきたただの情報(知識)が、自分なりの考え(見識)に変化しました。
見識が、実行力と決断力を備えたとき、それは胆識になります。
父親に免許返納を相談してみようかな・・・
ここまではまだ見識です。
よし、明日父親に免許返納を相談してみよう!
これが胆識です。
自分なりの考え(見識)が、具体的な行動をする意思(胆識)に変わりました。
知識は見識に、見識は胆識に、昇華していくものだと言えます。
あなたのまわりにこんな人はいませんか?
とにかく頭がよくて知識が豊富な人
そばにいると便利な人ではありますが、知識だけがあるだけでは、仕事をしたとは言えません。
やたらと意見は言うけど何もしない評論家タイプの人
見識止まりの一番めんどくさいタイプ。他人に気づきを与えることはできますが、評論だけでは仕事としては少し物足りません。
強いリーダーシップでバリバリ仕事をこなす人
こういった人が胆識を持ち合わせた人だといえます。こうなってこそ、ビジネスが動き出すのです。
私の職場では、
知識の人 2割
見識の人 6割
胆識の人 2割
といった感じです。
まさに2:6:2の法則の通りです。
ただしこれは時と場合によってコロコロ変わります。
自分の担当業務においては「胆識の人」であっても、あまり関係ない仕事では「知識の人」や「見識の人」になることがあります。
営業マンはお客様を目の前にしたら、セールストークが止まりませんね。胆識を持っているからです。
ではもし、この営業マンが新製品開発メンバーに加わったときはどうでしょう?
彼は「知識」として、お客様の求めるものを知っていますが、実際に新製品を作るのは開発部や製造部のプロたちです。ここでは「知識の人」でしかありません。
仕事と私生活でも、知識・見識・胆識のポジションは変わります。
会社ではボーっとしていても、趣味では精力的に行動する人もいます。
会社としてはちょっと困る存在ではありますが、本人にとってはそれもよい人生なのかもしれません。
ここまでで、この言葉の意味は十分ご理解いただけたと思います。
覚えやすくて説得力のある格言なので、行動力が足りない部下や後輩を説教するときに使うこともできます。
格言を使って他人を説教するのは、さぞかし気持ちいいでしょう。
が、私のおススメの使い方は、知識・見識・胆識をビジネスの「指標」に使うことです。
私の実例をご紹介します。
以前、業界関係者にとある講義をさせていただく機会がありました。
全5回のコースだったのですが、単に知識を披露するだけではおもしろくなかったので、毎回こんなアンケートを取ってみました。
これを5段階で評価してもらい、毎回私の講義を評価してもらいました。
毎回結果をチェックすることによって、私は多くの気づきを得ることができした。
(今日の講義は若手にはちょっと難しかったけど、ベテランには胆識を多く与えることができたかな)
(今日はみんな胆識にまでなってないな、内容が難しすぎたかな)
参加者からも、この視点で講義を振り返ってみるのはとてもおもしろい、と大好評でした。
わが社でもこのアンケートを活用したい!という方もいらっしゃいました。
このように、知識・見識・胆識は、進化していくものなので、理解の深さがどんな状態にあるのか?をチェックする「指標」として使うには、とても便利な言葉なのです。
ただの格言とはいえ、他にもいろいろな使い方があると思います。
あなたも、この「三識」という格言を、ただ知識として頭に入れるだけではなく、実際に活用してみてください。