”手戻り”という言葉、聞いたことがありますか?
一言で言えば、やり直し、という意味です。
ビジネスの現場でもよくあることです。
上司に資料の作り直しを命じられた
提案が会議で否決された上に宿題が出た
作ったプログラムにエラーが見つかってやり直し
いずれもあってはならないこと、避けるべきことなんですが、残念ながらよくあることでもありますね。
うちの会社でもこの手戻りが頻発しています。
会社には、経営会議という重要な会議があります。
経営会議では、社長や副社長といった取締役クラスや各領域の担当役員が主なメンバーとなり、全社的な重要事項の意思決定を行います。
中間管理職である私は経営会議には出席しませんが、各領域を代表して経営会議に出席する担当役員のために、資料や情報をちゃんと整理して準備したりします。
これがなかなかタフな仕事なんです。
経営会議本番までの道のりは遠いです。
経営会議での議題決定
各事業本部への議題展開
各部門への議題展開
各部門で情報収集と資料作成
各部門の部門長による資料確認
各事業本部の担当役員による資料確認
担当役員による経営会議メンバーへの事前説明
経営会議本番
笑われるかもしれませんが、これが昭和の大企業の実態です。
こんな遠き道のりなので、経営会議の議題が決定してから本番まで、数週間は欲しいところです。
ただし、すべての道のりで ”手戻り” が無い、という前提においてです。
この ”手戻り” が、うちの会社では最近特に顕著になってきて、経営レベルでの”手戻り”が発生し、役員から現場までみんなが疲れ果てています。
私が考える最大の理由。
それは、経営者と現場がつながっていないということです。
意識も数字もつながっていない。
いわゆる大企業病ってやつです。
経営者は高い目標を掲げて仕事をしています。
その高い目標に対して、現場の目標が低い、あるいは目標そのものが無い。
会社としての目標や方向性において、経営と現場でギャップが生まれているのです。
これが ”手戻り” が多発する根本的な原因だと私は考えています。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
スタッフ部門は、管理部門とも呼ばれており、経営企画部などを指します。
会社組織においては、現場(ライン部門)が筋肉だとすれば、スタッフ部門は頭脳であり、血管や神経でもある部門です。
つまり、経営者の考え方や会社の方向性を正しく迅速に現場に伝達し、経営と現場をつなぐことが、スタッフ部門の重要な使命です。
「また経営企画部が無茶言ってきやがった・・・」 「営業の連中は何考えてんだ!?」 会社の中ではよく聞こえてくる言葉ですね。 あなたの会社では、対立する組織ってありませんか? 人間関係は良好でも、仕事となると組織間で対立するようなケースって、どこの会社でも見られる光景です。 組織が大きければ大きいほど、そういった対立構造ってあるのではないでしょうか? 今日は、 犬猿の仲の部門が仲良く仕事するにはどうすればよいか? 私の実体験をお話します。
ところが、このスタッフ部門の伝達する力が弱い。
例えばこんな会話。(青葉が現場の人間役です)
アメリカから輸入する予定の生産設備ですが、予算に対していくらになりそうですか?3日後に役員に報告しますので、このフォーマットを使って報告資料まとめてください。
3日後!?なんでそんなに急なの?まだ見積もり取ったばかりだけど・・・
来週の経営会議で議題になるそうです。事前に担当役員が見たいと言ってます。
えらい急な話だね・・・まあ仕方ない。頑張ってみます。にしても予算が厳しいな・・・これどうやって算出されたの?
ええと・・・ちょっと確認してみます
報告するのは金額だけでいいの?この設備はこんな予算じゃ買えないよ。その理由もちゃんと説明しないとダメなんじゃない?
それも役員に確認してみます。
予算未達の理由も必要なら、3日後の報告なんて無理だよ。価格交渉はこれからアメリカの取引先とするんだから。時差もあるし。
ですよね・・・
報告値は、ドルで報告するの?円で報告するの?為替レートはいくらを使えばいいの?
それも合わせて確認します・・・
ちょっと待って。このフォーマット、大事なポイントが抜けてるし、これじゃダメでしょ?
すぐ持ち帰って修正します。
いつまでに?
明日中には・・・
もういいよ・・・俺が直接役員と話するよ・・・
上からの指示を、何も考えずに右から左に流しているだけの、ダメなスタッフの典型的なパターンです。
このスタッフの依頼を、そのまま受けていたら確実に手戻りになります。
スタッフとして、現場の人間に、ここまで言い返されるのは恥ずべきことです。
スタッフ部門は、常に強く賢くあるべきで、圧倒的な知識とプライドによって、筋肉である現場を正しくコントロールするのが理想なのです。
一方、現場(ライン部門)においても、スタッフに言うべきことを言わずに、ただ黙って仕事を受ける管理職や担当者がたくさんいます。
現場にもロボット化した人がたくさんいるのです。
右から左に仕事を流していれば一見楽なように見えますが、実際は手戻りだらけとなり、結局は余計な仕事が増えることになります。
そうなると、ますますストレスが高まり、モチベーションも下がっていくという悪循環に陥るのです。
担当者レベルならともかく、管理職はこんな状況を見過ごしてはいけません。職務怠慢です。
他部門やスタッフ部門から仕事を引き受けるときは、まずは自分自身が納得してから部下に展開することが必須です。
適当に仕事を引き受けて、自分の部下に手戻りをさせてはならないのです。
スタッフは、経営と現場の板挟みになることもあり、情に訴えて泣きついてくるケースもあります。
そんなときでも、納得のいかないことは安易に引き受けてはいけません。
泣きついてくるスタッフは、自らの責務を果たさずに、言いやすい相手(現場)に甘えているだけなのです。
ただ、単に突っぱねるだけではなく、困り果てているスタッフに手を差し伸べ、一緒に問題を解決するのがよいでしょう。
この記事では、経営会議を事例に手戻りの話をしていますが、私と部下の間でも手戻りは発生します。
部下に作成指示した資料が、私の思いとズレているようなケースもあります。
「なんだこれ・・・違うじゃないか」とイラっとすることもあれば、「ああ、俺の指示が悪かったな・・・」と反省することもあります。
でも、一から十まで上司に指示してもらうことに期待するのは間違いです。
よほど優秀な部下であれば、上司の思いを忖度して、適当な指示でもしっかり期待に応えてくれますが、なかなかそうはいきません。
であれば、わからないことはちゃんと上司に確認した上で、作業に取り掛かるべきです。
これは、経営と現場の間にいるスタッフにも言えることです。
結局、手戻りを無くそうと思えば、自分の目の前の仕事だけ見ていたらダメなんです。
”後工程はお客様” という言葉があります。自分の仕事を引き渡す次の工程のために、自分の仕事をきっちりやりましょうね、という意味です。
でも手戻りを防止するためにはそれだけでは不十分であり、”前工程もお客様” という意識も必要です。
誰かから仕事を依頼されたときは、その依頼にただ応えようとするだけではなく、その依頼そのものが正しいものなのか、手戻りが発生するリスクは無いのか、ひとつ高い視点で仕事を俯瞰し、考えるべきなのです。
さらに欲を言えば、正確に右から左に流すだけではなく、自分の仕事によって依頼元の期待を越えるアウトプットが出せれば、なお良しです。