休日にショッピングモールを散歩していたとき、私が昔所属していた部門の同僚にばったり出くわしたんですよ。
彼とは今でも同じ会社に勤務しているのですが、顔を合わせるのは5年ぶりくらいです。
うちは事業所が国内外にたくさんあり、私もいろんな職場を渡り歩いているため、こういうことはよくあります。
お互い暇つぶしで散歩していたので、そのまま話し込んでしまいました。
最初は世間話をしていたのですが、だんだんと仕事に関する話題になっていきました。
今、彼が一番頭を痛めていることは、
30代から40代前半くらいの中堅社員がどんどん辞めていく
ということでした。
私がいた頃は、退職する中堅社員はほとんどいませんでした。
自分で言うのもなんですが、有名大企業で給料も福利厚生もよい会社です。
むしろ中途入社で入ってくる中堅社員が多く、人はどんどん増えている印象でした。
でも、最近辞めていく社員というのは、中途入社ではなく、新卒入社のベテラン中堅ばかりだというのです。
たしかに、ここ最近「お世話になりました、退職します」メールが私のところにも届き、「ええ!あいつが辞めるの!?」ということも何度かありました。
その部門は200人くらいの組織なのですが、中堅の退職が増加したのは、担当役員が変わってから顕著になったそうです。
その新しい担当役員さん(A役員と呼びます)は私も昔から知ってる先輩なのですが、人柄もよく有能です。見た目もシュッとしていて、若いころは女性にモテモテでした。
一方、前任の役員は60代半ばで、頭は良かったのですが、横柄で上から目線が強く、あまりいい評判は聞いたことがありません。私も苦手でした。
担当役員が若返って、さぞかし部門の士気もあがるだろうと思っていたのですが、中堅社員がバタバタと辞めていくとは・・・
同僚に事情を聞いてみたところ、どうもA役員による「組織の若返り化」が要因のひとつではなかろうか、と思われました。
まずこの部門は、新型コロナ拡大などの外部要因によって、業務多忙な状態となっていました。
どこの部門も苦労はしていますが、とりわけこの部門は影響が大きかったのです。
前任役員がわりと長期政権になっていて組織も閉塞感があったため、「ピンチをチャンスに」とA役員は組織の再編を断行しました。
40代前後の若手を何人も抜擢登用して、管理職もずいぶん若返りました。
ここまでは私も知っていて、「先輩、ヤル気満々だなぁ(^^)」と、組織の活性化にとても期待していました。
ところが現場の実態としては、組織は活性化するどころか、何か暗い雰囲気になっていったそうです。
若手が何人か抜擢登用された結果、追い出されたベテランは裏方のような仕事にまわされました。
裏方といっても、私に言わせれば極めて重要な仕事であり、エースクラスを投入すべき仕事をやっているのですが、前任の役員によって「この仕事は使えない人がやる仕事」のようなイメージが作られてしまっています。
A役員はおそらく私と同じ考えを持っていて、「裏方業務のテコ入れ」という思いもあるはずなのですが(たぶん)、部門内では「飛ばされた」という印象が未だ強く、年配者が裏方に飛ばされたという噂が部門内で囁かれるようになりました。
そして、50代以上のベテラン達の士気が目に見えて下がってきたらしいのです。
「もう俺たちの時代でもないよな、若手に頑張ってもらおう・・・」
「あの年代が管理職になるのなら、俺の出世はもうないな・・・」
ただでさえ業務工数が逼迫している中、ベテランの士気が下がってしまったため、そのしわ寄せは30代40代の中堅社員にきました。
うちの会社では、40歳前後の社員って割と多いんですよ。
90年代のバブル崩壊後にしばらく業績低迷して採用を抑えていたのですが、2000年代前半に、リーマンショックで再び採用を抑えるまで、積極的に新卒採用していた時期に入社したのが彼らなのです。
また中途採用した社員もこの年代がほとんどです。
人数が多い世代なので、頭数としては十分な戦力を持っていることになります。
抜擢されて収入も増えた中堅社員は、それなりにモチベーションも上がっていますが、業務負荷が高い上に、「抜擢してやったんだから」と難易度の高い宿題を山程もらって、疲れ果てている様子。
それを見た同年代の中堅社員はどんな気持ちになるでしょうか。
今回の組織編成で自分は抜擢登用されなかった
それでも仕事は山のようにある
抜擢された同世代も疲れ果てている
年配者はやる気を失って隠居状態
自分はこれからどうなるのか?どう生きるべきなのか?
在宅勤務が多くなり直接誰かに相談するのも難しく一人で抱え込み悩む日々
そして「辞めるなら今」と辞表を出す・・・
辞めずに残っている大量の中堅社員のモチベーションは更に低下・・・
あくまで、おじさん2人のカフェトークで「そんな感じじゃない?」と話した程度のことですが、なんとなく想像はつきます。
有名大企業で経験を積んだ30代40代なので、転職はそれほど難しくありませんしね。
自民党でも芸能界でも、年配者がいつまでも頑張ることは「老害」と批判され、「組織の若返り」は絶対的に正しいことである、というイメージがあります。
ただ、組織として働き成果を出していく会社においては、組織の若返りも簡単ではありません。
「老害」がいなくなってやる気を失う「若者」も少なからずいるということでしょう。
A役員も豪腕で思い切ったことをやっちまいましたが、過渡期とはいえモチベーションを失った組織をどう立て直すのか、その手腕に期待しています。
この部門、しばらく観察して、また記事にしてみたいと思います。