有能で人柄もよい上司。
部下としてはこんな上司の下で働きたいものです。
まだ私が主任だった頃、そんな上司の下で働いたことがあります。
その上司はどんな人かと言うと、
・上層部の信頼が厚い
・人柄がよく怒ったりしない
・部下への感謝の言葉を忘れない
でも、当時の私はどうにも彼を好きになれなかったんです。
口には出さなくても、心の奥で同じように感じている部下は他にも多かったんだと思います。
私の会社で定期的に実施している従業員アンケート調査の結果によると、スタッフの職場満足度は決して高くはありませんでした。
無能で性格も悪い上司の下にいる人から見れば、なんとも贅沢な部下だと思うかもしれませんね。
でもちょっと待ってください。
誰が見ても無能で性格も悪い上司であれば、同僚同士で「あの課長は無能だよね」「あんな言い方は無いよね」とか陰口も叩けます。これが職場のストレス解消になったり、逆に職場の一体感を生み出すこともあります。
でも有能で人柄もよい上司に対して感じている不満って、同僚同士でもなかなか口に出しにくいんですよね。
口に出したら負け、みたいな。
有能な上司だから、言うことはすべて正しいので反論の余地も無いし。
そんな状態が続くと、部下の心はじわじわと弱っていき、無記名の従業員アンケート調査でSOSを発信することしかできなくなります。
私がこの上司をどうにも好きになれなかった理由は、こんな言葉を多用するからです。
「もっと頑張ろう!」
言い方は様々ですが、日頃から、
「仕事をスピードアップしよう!」
「アウトプットの質をより向上させよう!」
と連呼していました。
毎日毎日こんなメールが部下に送り続けられていました。
みなさんが頑張って作ってくれたすばらしい資料のおかげで、昨日の会議は大成功でした。ありがとうございました。
我々のやるべき次の仕事は○○です。
当然みなさんはそれを理解してくれているので、既に前に進めていただいていると思います。
具体的な仕事の進め方は以下の通りです。
① ・・・・・・・・・
② ・・・・・・・・・
③ ・・・・・・・・・
これらの仕事をさらにスピードアップし、明日の会議も必ず成功させましょう。
みなさんの悩みや困りごとを聞きたいので、作りかけでもいいので、今日の夕方に資料を見せてくださいね。
これを見た私は、口には出さずとも、いつもこんなことを思っていました。
(今も毎日全力疾走しているのに、これ以上スピードアップとか無理・・・)
(「既に前に進めている」?やってないし・・・やる余裕も無いし・・・)
冒頭の部下に対する感謝の言葉は、無いよりはあった方がよいフレーズですが、そんな言葉を受け入れる心の余裕もありません。
部下や組織を鼓舞するために「ありがとう!」「頑張れ!」というのは簡単ですが、そんな言葉だけでは頑張ることができない部下の状況も理解してもらいたいものですね。
もしあなたの上司がこのタイプであったとしても、上司を変えることはできませんので耐えるしかありません。
ただ私の経験上、ここで耐えきることができれば、足腰はかなり鍛えられると思いますので、「筋トレ」だと思って”頑張って”ください笑
仕事を理解し、俯瞰できている有能な上司であれば「あれをやれ、これをやれ」と言うことができます。これさえできない上司は明らかに無能です。
でも「これはやらなくていい」と言える上司は、もっと有能だと思います。
「もっと頑張れ」ではなく「これはやらなくていい」と言える上司になりたいものです。