今回の記事では、管理職のバイブル『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を参照しながら、部下に仕事を任せるコツについて解説していきます。
40年近く前に書かれたビジネス書ですが、その内容や考え方は働き方がどのように変わっても大切なことばかりです。 新型コロナウイルスによって在宅勤務が注目を浴びていますが、むしろリモートワークの時代にこそ、この本に書かれているマネジメントの「本質」が重要になってくることは間違いありません。
管理職によるレバレッジ
レバレッジとは、「テコの作用」という意味です。
管理職がひとりで頑張って働いてもアウトプットはたかがしれています。
しかし、部下をうまく使ってチームで頑張れば、すなわち「効果的にレバレッジをかけること」ができれば、チーム全員の力を結集し、さらに大きな成果が出せます。
管理職というのは、スポーツに例えれば選手ではなく監督です。
そして監督はチームに1人しかいません。
1人でサッカーや野球はできませんから、監督は選手全員に対して働きかけることによってのみ、チームを勝利に導くのです。
勝利するために、対戦相手の特徴やチームの状態を把握し、チームを編成し、作戦指示を出すのです。これこそが、監督のチームに対するレバレッジです。
つまり管理職は「インフルエンサー」だってことです
レバレッジはお早めに
効果的にレバレッジをかけるにはいくつかの上手なやり方があります。
まず、なるべく早いタイミングでレバレッジをかける、ということです。
スポーツであれば、試合の前にレバレッジをかけるのです。
管理職は大勢の部下に仕事の指示を出します。
月末までに新プロジェクトの企画書をみんなで作ろう!
指示を出した後は、完成をただ待つのではなく、途中で様子を確認したりします。
どう?進んでる?どんな感じになってきた?
そこで管理職がイメージする通りに進んでいればよいのですが、だんだん方向がズレていくケースもあります。
ここをもっと詳しく書かないと・・・もう一度調べてみてくれる?
こんなことになると、仕事の「手戻り」となります。仕事がある程度進んでしまってからの軌道修正です。
多くの時間をロスしますし、何より部下のモチベーションが心配ですね。
(だったら先に言っといてくださいよ・・・)
仕事を指示したときに、あらかじめ重要なポイントや必要な情報を一言伝えておけば、このような手戻りは防げます。
仕事を指示するときは、あらかじめ自分の頭で進め方やアウトプットをイメージして、早めに部下を正しい方向に向けておくことが重要なのです。
何も考えずに適当に投げてしまうことは、チームにとっては「逆」レバレッジとなるのです。
これでは単なる「丸投げ」ですね。
ただし、意図的な「丸投げ」はアリです。それは後ほど。
とにかく教えてあげる
また、管理職自身の知識や技術を部下に伝えるのも、上手なレバレッジのかけ方です。
管理職も、かつては優秀な平社員だったはず。
それに部下より経験値は高いはずですから、ある程度は語れる技術や知識は持っているはずです。(年老いて時代の流れについていけてないこともありますが・・・)
そんな知見を部下にしっかりと伝え、成功に導くのです。
成功した部下は、その知識や技術をもっと多くの人に拡散することでしょう。
これこそレバレッジです。
ただし、一方的に伝えて調子にのって満足しちゃダメですよ。
しっかり部下と対話をし、部下が納得して腹落ちするまでが管理職の役割です。
そう考えると、一子相伝の北斗神拳ってレバレッジ小さいですね
部下への口出しは必要最小限で、そして見守ること
この管理職のレバレッジのすごいところは、実際に部下にレバレッジをかけるのはわずかな時間でできるのですが、その効果は長期間持続し拡散していくということです。
管理職の一言で、大勢の部下が、何日も何か月も動き続けるのです。
そう考えると一言一言が責任重大!
そうなんです。
だからこそ、管理職は自分の一挙手一投足が、レバレッジにもなれば逆レバレッジともなる諸刃の剣であることをしっかり認識し、日ごろの言動や振る舞いには気を付けなければならないのです。
そこで注意しなければならないのは、部下に関与する頻度です。
いますよね。細かいことをいちいち口出ししてくる上司。ウザい!
よくあるケースですが、どっちもどっちということが多いように感じます。
まともに仕事もできないのに自信過剰で自分勝手な部下もいます。
監督なのにいつまでも打席に立ってバットを振りたい上司もいます。
ただ管理職なら、なんでもかんでも口出しするのではなく、
「いつ、どこに、どのように口出しすればレバレッジを最大化できるか?」
ということをまず考えるべきで、関与は必要最小限にするべきです。
むしろ「どうやって口出しするか」を考えるのではなく、「どうやって口出ししないようにするか」を考えるべきです。
余計な関与は、レバレッジどころか、これまた逆効果なのです。
必要最小限で、最大のレバレッジをかけて、後は任せる。
これこそ「権限移譲」です。
部下に仕事を丸投げしておいて、権限委譲って思いこんでる無責任な管理職もいるよね
『HIGH OUTPUT MAGAMEMENT』の著者、インテル元会長のアンディ・グローブも言ってます。
最後までトコトンフォローしない権限委譲は”職務放棄”だという原則をよく考えておいてほしい。
「丸投げ」と「権限委譲」の違いは、投げた後にしっかりとモニタリングとフォローをするかしないか、です。
先ほど私は「意図的な丸投げはアリだ」と言いました。
これは、管理職としてモニタリングやフォローをする必要が無いと判断した上で任せているケースです。
丸投げしていいかどうかは、仕事を任せた部下の経験や力量によって判断されます。
ひとつ間違えば、部下からうっとうしがられる関与についても、部下の経験や力量によって頻度は調整すべきです。
任せる仕事の優先順位
仕事を任せるときに、どんな仕事を優先的に任せるべきでしょうか。
難しい仕事?
部下の成長のためにはよいかもしれません。
めんどくさい仕事?
投げたい気持ちはわかります笑
答えは、あなたが一番よく知っている仕事こそ最優先で任せるべきなのです。
よく知っているだけに、自分でやってしまいたい気持ちもあります。でも、よく知っているからこそ、モニタリングも簡単で的確なアドバイスもできます。
難しい仕事やめんどうな仕事を投げた場合、部下が行き詰ってしまったり、間違ったアウトプットを出してしまう可能性も高いです。
そうなった場合は、仕事が手戻りになり「最初から自分でやっておけばよかった・・・」なんてことになりかねないのです。
管理職が楽がしたいと思うのならば、普段から部下の仕事ぶりや能力をしっかりと把握しておかないとダメですね。
それをめんどくさがる管理職は、一生馬車馬のように働けばいいのです。