「ワンチームでがんばりましょう!」
「ワン(自社名)の精神で!」
会社でそんな言葉を聞くと、どうも私は一歩引いてしまうことがあります。
(ああ、こりゃまたロクなことにならんな・・・)
と。
私はこの「ワンチームの精神」を決して否定しているわけではありません。
むしろ、すばらしい。
ただし、ワンチームの精神がその力を発揮するためには、ひとつだけ必須の条件があるんです。
「ワンチームの精神」は会社では正論
「ワンチームとは?」なんて説明はいりませんよね。
一致団結する、程度にとらえておけば十分だと思います。
「ONE TEAM」といえば、2019年のユーキャン流行語大賞になりました。
当時、ラグビーワールドカップでベスト8まで進出した日本代表のスローガンです。
ワンチームの精神で、日本代表はすばらしい成果を出しました。
当然、会社の中にもこの流行語を使いたい人はいるわけです。
「ワンチームでがんばりましょう!」
特に熱血上司が言いそうですね。
部下の中には否定的にとらえる人もいるかもしれません。
(無策無能な上司がまた精神論をかざしやがって・・・)
(気合はわかったけど、で、どうすんの?)
でも私はこんな上司はアリだと思ってます。
むしろ無策無能な上司だからこそ、ワンチームの精神が必要なんです。
自分の無策無能をチームでカバーしてもらって組織として成果を出す。
これは管理職としては間違ってないと思います。
否定的にとらえる部下ってのは、この上司が何をいっても斜に構えて受け取るんだと思います。
ワンチームという言葉が悪いのではなく、上司と部下のコミュニケーションとか相性の問題でしょう。
チームで仕事をしている会社組織では、ワンチームの精神はまったく否定のしようがない正論です。
だから上司はみんな言うんです。言いたいんです。
それは絶対に間違ってない。
でも私はワンチームと聞くと、状況によっては否定的にとらえることがあります。
それは、
です。
ラグビーと会社の違い
ラグビーではワンチームの精神が機能するが、会社では機能しない場合がある。
この決定的な違いは、役割分担が明確になっているか否かです。
野球で例えれば、誰がどこを守備するか決まってないのに「一致団結して勝つぞ!」なんて精神論だけでは野球になりません。
ラグビー日本代表がワンチームの精神であれだけの成果を出したのは、各選手の役割が明確になっていて、選手同士がお互い信頼し、勝利というひとつの目的に向けて一致団結できたからです。
会社でもワンチームの精神が力を発揮することがあります。
それは、自分の職場内でのワンチームです。
みんながお互いを知っていて、どんな仕事をしているのかもわかっているケースです。
当然、上司も自分の部下のことですから、誰が何の役割を果たすべきなのかわかっているはず。
やっかいな問題が起こったら、上司に頼ることもできます。
こういうケースでは、多少役割が曖昧でも、まあなんとかなるもんです。
ワンチームが機能しないケース
問題は、いろんな部門が集まって何かをするケース。
単独の部門では対応が難しく、複数の部門が協力して解決にあたる必要がある仕事です。
もちろん、会社の組織や社員にはそれぞれ役割が決まっています。
しかし会社というものは常に新しいことに挑戦するものです。
新しいことに挑戦するケースでは、これまでの役割分担では対応できないこともあります。
そんなときに、いろんな部門が集まって対応を協議することになります。
その会議に、社長とか役員とか各部門を束ねる立場の人がひとりいれば、各部の役割分担を決めて明確に指示を出してくれることもあります。
でもそういう人がいなかった場合、各部門の代表者だけが集まった場合は、役割が不明確な仕事の分担が難しくなります。
押し付け合ったり、遠慮したり・・・なかなか役割分担が決まりません。
そうなると、誰かが言い出します。
「とにかくワンチームでがんばりましょう!」
もちろん、これは正論なので誰も反対はしません。
「だね!ワンチームで!」
役割分担が不明確なまま、仕事は前に進んでいくのです。
そうなると何が起こるか?
ポテンヒットが発生します。
ワンチームの精神が邪魔をして、「これは誰かがやってくれているだろう」とみんなが過信してしまい、結果的に誰もやってない、ということが起こります。
向き合う仕事が困難であればあるほど、「ワンチーム」という気持ちいい言葉に逃げる人が多くなりがち。
中にはポテンヒットを積極的に拾おうとする勇者もいるかもしれません。
それはすばらしいことですが、勇者がひとりいたところで課題は解決できません。
そうして「ワンチームの精神」はただのスローガンに成り下がるのです。
会社で仕事をする上では、「ワンチームの精神」は絶対的に正しい。
でも、ラグビー日本代表のように大きな成果を出したいのであれば、まずは役割分担を明確にするべきなのです。