クロスファンクショナルチーム(CFT:Cross Functional Team)についてお話します。
ビジネスパーソンなら聞いたことがある言葉かもしれません。
簡単に意味を説明します。
これだけ理解すれば十分です。
経営難に陥っていた日産にカルロス・ゴーンさんがやってきたとき、このCFTによって企業再生を果たしたことでも有名です。
選ばれしエリートが頭脳を結集して会社の大きな課題に取り組むのです。
あのカルロス・ゴーンさん(今では大変なことになってますが)が見事な成功を収めた、誰が聞いても非の打ちどころのない取り組みですね。
よし!うちもCFTやるぞ!
そう考える経営者や管理職もたくさんいることでしょう。こんなすばらしい取り組みですから当然ですね。
うちの会社でもそうです。
ところが、、、なんですよ。
私の知る限り、うちの会社におけるCFT活動は、そのほとんどが大した成果を出していないのです。
最近では、「CFT」って言葉を聞いただけでため息がでます。
「はぁ・・・またやんのか・・・」
間違いだらけのクロスファンクショナルチーム(CFT)
なぜうちの会社でCFTがうまく機能しないのか?
私も実際にわが社のCFTに参加した経験があります。今もひとつ参加しています。
そんな私が感じていることをお話します。
思いつきと勢いだけのCFT
会社には人事異動があります。当然、会長や社長、役員も人事異動で変わることがあります。
うちでは役員レベルの異動があるたびに、CFTの大号令がかかることが多いんです。
昇格したばかりの役員、異動したばかりの役員、言うまでもなくモチベーションの塊です。俺がやってやる!と鼻息フンフン言わせてます。
もちろん、役員になるレベルのビジネスパーソンですから、当然ながら優秀で課題意識が高い方々です。
この組織は人材活用がなってない・・・
うちの会社は営業が弱い・・・
このような大きな課題をちゃんと理解して、なんとかしなければならないと考えています。さすがです。
そして、いきなり言い出すのです。
CFTを編成して課題を解決しよう!
役員の大号令なので、当然みんな動き出します。
まず、各部門から代表参加メンバーを選びます。CFT結成です。
メンバーが集まって、課題解決に向けた議論を繰り返し、最終的に提案という形でまとめます。
そして役員に報告します。
ここでいつもひと悶着あるのですが、なんとか最終的にはまとまります。
これで役員のお墨付きをもらいました。
ここまではいいんです。問題はここからです。
CFTの成果は、この時点では提案書というただの紙切れです。いくら中身が素晴らしくても紙切れは紙切れ。(あるいはエクセルやパワポ)
これを実行してこそ、CFTに意味があり会社や組織がよくなるのです。
ところが、大半の役員は、この紙切れができたことで満足してしまいます。
うん、よくまとまった!あとはよろしく!
こうなっちゃうんです・・・
派手な花火を打ち上げることには熱心ですが、後片付けをしない。
そして、残念ながらこういう人が出世することが多いんです。目立つから。
その具体的な実行は、〇〇企画部みたいなスタッフ部門に丸投げされます。
スタッフでよく中身を揉んでから、ライン部門に展開しなさい
「また経営企画部が無茶言ってきやがった・・・」 「営業の連中は何考えてんだ!?」 会社の中ではよく聞こえてくる言葉ですね。 あなたの会社では、対立する組織ってありませんか? 人間関係は良好でも、仕事となると組織間で対立するようなケースって、どこの会社でも見られる光景です。 組織が大きければ大きいほど、そういった対立構造ってあるのではないでしょうか? 今日は、 犬猿の仲の部門が仲良く仕事するにはどうすればよいか? 私の実体験をお話します。
CFTのメンバーは期間限定で集められた各部門の代表メンバーです。
自担当業務のプロではありますが、他部門の業務知識はそこまでありません。
CFTのテーマとなるような組織横断的な全社的な課題に対しては、フレッシュな視点でいろいろなアイデアは出せますが、業務知識も職務権限も十分ではないケースがあります。
だから素晴らしい提案ができたとしても、その実現性や具体性についてはかなり薄っぺらい内容になるんです。
例えば、営業部門と開発部門の代表が「会社の昇給制度を見直しましょう!」と提案した場合。
役員に認められたとしても、まだまだ具体性には欠けた粗削り状態です。
そんな状態から、具体的な活動計画に落とし込み実行するのは、どうしても人事部門になってしまいます。
いきなり仕事を投げられたスタッフ部門もたまったものではありません。
現場の実情を知らない寄せ集めのメンバーが好き勝手に提案し、その実行を役員が丸投げしてくるわけです。
「この提案を揉んでくれ」と言われても、
「こんな提案できるわけないじゃん・・・」
「これは過去に検討済みだよ・・・また蒸し返すの?」
と困惑するのです。
一般論として素晴らしい内容とはいえ、現実と乖離したその麗しき提案の実現には時間がかかります。
どれだけ役員に脅されても、すぐにできないものはできません。
そうこうして時間が経つうちに、CFTの提案は忘れ去られていきます。
さらに月日が経つうちに、また役員の人事異動があるのです。
スタッフ部門にしてみれば、面倒な仕事を闇に葬る絶好のチャンス。
そして、CFTの提案は消滅します。
日産のCFTが成功した一番の理由は、言い出しっぺのカルロス・ゴーンさんが提案を実現させるまで厳しく鬼フォローしたからだと、私は考えています。
成功した人間には大きな褒美をあたえ、失敗した人間は容赦なく切り捨てるという信賞必罰も徹底しました。
一度決めたことは、たとえ血が流れようと、時間がかかろうと、必ず実現していったのでしょう。
CFTを成功させるつもりならば、そのくらいの覚悟が必要なのです。
ゴーンさんも今ではアレですが、日産を立て直した手腕は本物だと思います。
マネジメントの言いなりになるCFT
CFTを結成したはいいけど、ついメンバーにあれこれ口を出しすぎてしまう。
熱血役員によくあるケースです。
CFTは各部門から選抜された優秀なメンバーです。(であるべきです)
何のために優秀なメンバーを集めているかと言えば、本来、社長や役員クラスが対応すべき大きな課題を、彼らに代わってチームで対応することを目的としているからです。
CFTは経営陣の直轄メンバーであり、経営陣に対して意見をすることができる立場であるべきなのです。
残念ながら、そういうCFT本来の役割を忘れて、チームメンバーに対して事細かに指示したり、自分の理想を語るだけの役員もいます。
事細かに指示してしまっては、「フレッシュな視点でアイデアを出す」ために集められたCFTを殺してしまいます。
各部門のエース級に対して、理想をダラダラを語るのは時間の無駄。釈迦に説法。
語ってる本人が気持ちいいだけです。
メンバーの質が低下してくるCFT
役員がCFTをやると言い出すと、中間管理職はCFTメンバーを部下の中から選別しなければなりません。
毎度かけ声だけで成果がでていないCFTに、大切な部下を差し出すのです。
一方、いつもまともな成果があげられない我社のCFT。
さて管理職はどうするでしょうか?
一番ヒマそうな人や、使えない人を生贄にするのです。
これはこれで、管理職としてはダメな判断です。エース級を出すのが正しい判断。
でも過去の歴史がどうしてもそうさせてしまうのです。
中にはまともな管理職もいて、きちんとエース級を投入してきます。
そんなときに悲惨なことが起きます。
CFTが玉石混合状態となるのです。
CFTメンバーの中に、バリバリのエース級と、能力なしやる気なしの人が混在するのです。
チームに貢献しない人たちにイラつくエースたち。
エースにお任せ状態でやる気のない人たち。
とはいえ成果を出さなければならなりません。エースたちは焦ります。
もう俺が提案まとめるから、みんな何もしなくていいよ・・・
はぁ・・・
結局そうなります。
これではいろんな知見を活用するというCFT本来の目的は達成できません。
クロスファンクショナルチーム(CFT)を成功させるには?
ここまでお話したことから、CFTを成功させるために大切なことは以下だと考えています。
➋ 最高のチームを編成することに全力を尽くし、チームの提案には口出しよりも傾聴を!
❸ いかなる理由があろうと、CFTを立ち上げるのであれば、躊躇なくエース級を投入する!
最後までやり遂げる
CFTを成功させるためには、強力で持続的なリーダーシップが必要です。
個人のリーダーシップではなく、組織としてのリーダーシップです。
会社という組織においては “属人化” してはいけない仕事もあります。
属人化というのは、その仕事が人とセットになっているケースで、例えば、顧客リストが営業マンの頭の中にしか入っておらず他の誰も知らない、という状態です。
この営業マンが退職してしまったら、この大切な情報(会社の資産)は消滅します。
CFTのように、成果が出るまでに数か月、数年かかるような仕事も属人化してはいけない仕事です。
会社には人事異動があるからです。
このような仕事は、人につけるのではなく、組織という器に入れておけば、人が変わっても継続してフォローすることができます。
CFTには、「提案だけ作らせて解散」ではなく、ある程度の権限を与えて社長直轄組織に格上げし、実行まで責任持ってやってもらうのもよいと思います。
それならば、選ばれたメンバーのモチベーションも下がることはありません。
エース級メンバーが欲しいものは、賞賛の言葉ではなく結果なのです。だからこそエースになったです。
スタッフ部門に丸投げするにしても、投げた役員がちゃんと責任取って、たとえ何か月かかっても最後まで鬼フォローすべきです。
役員自身が異動になる場合も、後任役員にしっかりと引継ぎ、継続させなければなりません。
最終的にうまくいかなくてもいいのです。
それも結果のひとつです。その失敗で得られることもあるのです。
何より、会社にとって大切な人財育成の面では、きわめて大きな結果が残せるでしょう。
“見守る勇気” を持つ
せっかく全社からエース級の人材を集結させたのですから、ここはチームに仕事を任せるべきです。
ドンと構えて見守りましょう。
口出しするより傾聴です。信頼すべきメンバーの意見に静かに耳を傾けましょう。
怖がることはありません。それだけのメンバーですから、細かいところは粗削りでも、方向性を間違うことはないでしょう。
上に立つ人間には “見守る勇気” も必要です。
仕事を任せることになんで勇気がいるの?
任せるということと、丸投げするということは大きく違います。
部下になんでも仕事を丸投げするのは管理職としては当然失格です。
管理職にとって “任せる” ということは、すべての状況を把握した上で部下の仕事ぶりを見守り、組織が求める最低限の成果すら出せそうにない場合に、必要最小限のサポート(口出し)をすることです。
仕事の結果に責任を持つ管理職にとって、状況を把握した上で任せること、静観することは勇気のいることです。
結果が出なければ自ら責任を取らなければなりません。役員の叱責を受けるのも管理職。
少しでもうまくいってなければ、あれこれ口を出したくなります。でもそれは管理職自身の保身です。管理職だって怒られるのは避けたいですから。
でも、失敗が怖くて細かいことに口を出すくらいなら、部下に任せずにすべて自分でやればよいのです。そうすれば確実に結果は出るでしょう。上司に叱られることもないでしょう。
でもすべて自分でやってしまっては、大きな成果をたくさん生み出すことなどできません。
部下が成長するチャンスをいたずらに奪うだけです。
特に大きな成果を狙っていくCFTでは、まずはチームメンバーを理屈抜きに信用し、任せてみて、彼らのモチベーションを最大限高めることを優先すべきです。
より大きな成果を出してもらうために部下に口出しするのもダメなの?
良かれと思って口出しする。よくあることですね。
ダメとは言いません。でも口出しは必要最小限にした方がよいと思います。仕事の成果を狙うだけではなく、部下の成長も狙っていきましょう。
管理職の一言というのは、管理職自身が考えているよりも部下にとっては重いものなのです。
善意とはいえ、あれこれ口出しするのが、果たして良いことなのか?
そこのさじ加減は説明するのが難しいのですが、空気を読んで、管理職自身の力量で判断するしかありません。
とにかくメンバーはエース級を投入する
部門横断の大きな全社的な課題に取り組むこと、これすなわち “経営体験” とも言えます。
普段自分の担当領域でしか仕事をしていないメンバーが、限りなく社長に近いところの大きな課題に取り組むわけです。
他部門のメンバーから得られる知識、普段接することの少ない経営陣との接触、すべてが貴重な経験となります。
これほど素晴らしい人材育成の場は滅多にありません。大チャンスです。
また、会社では職位が上がれば上がるほど、他部門との接点も濃くなってきます。
CFTメンバーがいつの日かそれぞれの職場で出世して役員になった場合、経営会議なんかで「あの時は俺たち若かったね!大変だったけど楽しかったね!」なんて言えるようになれば、どんなに素晴らしいことでしょう。
CFTに部下を差し出せと言われても、自分の職場も人手が足りてなくて厳しい状況かもしれません。
でも、CFTのお誘いがあれば、迷うことなくエースを投入しましょう。
これは普段の人事異動でも言えることです。
私の場合、人事異動で自職場から人を出すときには、一番優秀な人間から候補にします。
職場としては困るけど、会社にとってはこれが一番いい選択なのです。
それでもCFTはやるべき
かなり手厳しくわが社のCFTを批判してしまいましたが、CFTは間違いなく素晴らしい取り組みです。
会社の大きな課題解決につながるだけではなく、人を育てます。
今回は、わが社の問題事例をベースにお話しましたが、CFTをやろうとすれば、各社各様で問題が立ち塞がってくると思います。
この記事が、そんな問題に立ち向かっていく人に、多少なりとも参考になれば幸いです。
今回の記事は、第二次世界大戦の頃、日本海軍連合艦隊司令長官であった山本五十六海軍大将の名言についてです。山本五十六の名言と言えば、やっぱりこれですね! 「やってみせ 言って聞かせて させてみせ 誉めてやらねば 人は動かじ」 部下を持つ管理職の、また子供を育てる親としてのあるべき姿として、ご存知の方も多い名言ですね。 でもこの名言には続きがあるのをご存知でしょうか? そしてその続きが、これまたとても大切なのです。