以前、「経営企画の『企画』とは」というテーマで記事を書きましたが、今回はもっと広義の『企画』について、その王道的な進め方について解説します。

ビジネスにおける『企画』とは

申し訳ありませんが、『企画』という大きな意味を持つ言葉を、明確に定義することは不可能だと思います。

ちなみにWikipediaでは下記の通り。

企画(きかく)とは、議論の過程の一つで特に単発的な新規の事柄を計画することや、その議論によって行われる催し物(イベント)。その動作は「企画する」と動詞形で呼ばれる。人数は1人または複数人で行われる。企画を専門に行う部門を持つ会社もあるほどである。

うーん、わかるようなわからないような、私にはピンときません。

ビジネスにおける『企画』という言葉は、本当に定義が様々であり、あまり言葉の定義は意識せず、自分なりの解釈を持っておけばよいと思います。

「夢を形にすることだ」でもいいですし、「競合との戦い方だ」でも、なんでもありです。

私は『仕事の設計図(業務設計図)を描くこと』と勝手に解釈しています。

『企画』って楽しい?

本来は楽しいことだと思います。

ゼロから物事を考えて形にしていく『企画』ってものは、真っ白いキャンバスに絵を書いたり、ノートラックの雪山を一番乗りで滑るようなものです。

特に就活生には、○○企画部とかって人気ありますよね。エリートというか、頭脳集団のイメージがあるのかもしれません。

実際に○○企画部で働いている人が、仕事を楽しめているかどうかはさておき笑

大きな会社の中にある『企画』という仕事は、プランを作る部門と実現する部門が違ったりしますので、本来の『企画』の醍醐味は感じにくいのかもしれません。

デートとか旅行の『企画』であれば、プランニングから実現まで体験できるので、楽しいもんですけどね。

『企画』の進め方

『企画』の進め方について、『企画』の仕事未経験者の方に向けてざっくり解説してみます。

あくまで一般的な進め方だとご理解ください。

① 将来ありたい姿、実現したい状態のイメージを持つ

まずは理想像ありきです。これがないと企画は始まりません。

(例)海外で自社製品を販売したい、新サービスをもっと世間に広めたい、等

ここではあまり難しく詳細に考える必要はありません。

この後で、死ぬほど悩むことになりますので、ここは気楽に素直に。

ここで大切なのは、自分の情熱に火をつけることです。

上から指示されてやらされる仕事ではなく、自らが発意して、むしろ上を動かして仕事を進めていくんだ、という情熱と覚悟を持ちたいですね。

② 情報の収集と分析

新しいことにチャレンジするのが『企画』なので、当然情報収集は必要となってきます。

(例)競合会社の情報、自社の過去事例、等

会社の経営企画なんてやってると、かなりマニアックな情報なんかも必要になってくることがあり、1冊数十万円の本を買うことも・・・

情報収集はお金をケチるところではありませんが、なるべくならGoogleで頑張りたいところです。

私はYoutubeなんかもよく活用しています。特に海外の動画。英語なので理解するのがちょっと大変ですが、かなり貴重な情報が転がっていたりします。

ChatGPTを活用すれば、外国語の長い長い論文も簡単に内容を理解することができますので、私もかなり重宝しています。

自社の過去事例なんかは、わりと入手するのが大変だったりします。

ここは地道にいろんな部門や人に聞き取り調査をします。(ここで心が折れる人もいます)

③ ありたい姿を実現するための物語づくり

収集した情報をベースに、どのようにありたい姿を実現していくのか、物語(ビジネスシナリオ)をつくっていきます。ここが企画屋の腕の見せ所であり、一番頭を使うところであり、企画という仕事のおもしろいところです。

(例)自社や他社の成功/失敗事例をベースに成功シナリオを考える、等

そして、頭の中に描いたシナリオを、まずは文字や絵で表現してみます。

そうすることによって、自分自身の頭の整理にもなり、シナリオ検討がより具体的に進みます。

どの程度のものを作るのかは、人それぞれです。

どうせ人に見せるものではない、と割り切って、畳1枚くらいの大きさの絵を書いてもよし。

あるいは、他人が見て理解できるか、を意識して、パワポ数枚程度にまとめてもよし。

私の場合は、あまり文字の多い資料をつくると、自分が理解できなくなってくるので、パワポでシンプルな構造図を書く派です。

こちらは実際に私が作った「ざっくり企画書」のイメージです。内容はぼかしてありますが、おおよそこんなブロック図から入っていきます。

できれば、ここでいつ誰が何をするのか、までざっくり表現できればベターです。

また、この段階で、上司でも同僚でもよいのですが、よいアドバイスをくれそうな人、この案件についての知見のある人に、一度ざっくり相談してみるとよいです。

「こんなこと考えてるんですけど、どう思います?」くらいでOKです。

もちろん、すべてのアドバイスはしっかり聞き取るようにしてください。貴重な意見です。

④ 企画書を仕上げる

いよいよ企画書を最終化します。

ただし、注意すべきことがあります。

この企画書は「あなたの熱意やあなた自身を売り込むものではない」ということです。

なぜこの企画を実行する必要があるのか、なぜこのやり方でやるべきなのか、を相手にしっかり理解してもらうことが企画成功の秘訣です。

当たり前ですが、あなたと利害が異なる相手にとって、どんなWinがあるのかを納得してもらうのです。

相手はハナから否定しにかかってくる、くらい想定して、資料を準備したほうがよいと思います。

もちろん、資料はシンプルであるに越したことはありません。

老眼の上司相手に、虫眼鏡が必要な資料を見せつけるのは不親切ですし、どんなにすばらしい内容でも相手に受け入れてもらえません。

「文字の量=情熱と努力の証」などと考えてはいけません。

相手に伝えたいポイントが絞れていないだけのダメ資料です。

⑤ この企画の「目的」を再確認する

ここまでで、資料の準備まではできました。

さあ上司に提案しようというとこですが、ちょっと待ってください。

一呼吸おいて自問してみてください。

「そもそもこの企画の目的ってなんだっけ?」

 

当初は自分のやりたいこと、夢や希望を持って企画を考えていたはずですが、資料をつくっていくうちに、企画書がただの”To Do List”になっていませんか?

行動力のある人や熱意の強い人は、とにかく早く行動したい、という気持ちが全面に出てしまうことがあります。

そうなると、そもそもの企画の目的や、その企画によって達成したいことが薄くなってしまうケースがよくあるんです。

あれをします、これをします、という内容ばかりで、「それやって目的を達成できるの?課題は解決するの?」というのがよくわからない企画書になってしまうのです。

どんなにDoが素晴らしい内容であっても、その目的に紐づいていない限り、誰もその企画を理解してくれないでしょう。

上司は、あなたの「行動(Do)」に賛同するのではありません。

あなたの「目的」に賛同してこそ、その企画を承認してくれるのです。

⑥ 上司や関連部門に提案する

提案相手は「この企画を実行するGOサインを出せる立場にある人や部門」となります。

ここまで頑張って温めてきた提案をお披露目する重要なイベントです。

どれだけあなたが熱意を持っていても、かんたんには攻略できないでしょう。

「提案としてはいいけど、そんなことやる人も予算もないよ」

「いつかはやりたいけど、今は忙しくて手が取れないよ」

そんなネガティブ意見は当たり前のように出てくるでしょう。

しっかりと想定質問を予測し、その答えを準備しておくことが必須となります。

何か質問されたら即答が原則。

「ちょっとわからないので、持ち帰って調べます」では弱い。提案相手に不安を与えてしまいます。

一発勝負だ、くらいの覚悟で徹底的に準備してください。

でも安心してください。

どんなに相手が知ったかぶって突っ込んで来ようが、この『企画』に関しては、あなたほど理解している人はいないのです。

あなたほど情熱を持っている人はいないのです。

必ず説得できるはずです。

その覚悟と自信が無いのであれば、まだお披露目するタイミングではない、ということです。

もう一度「企画の目的」に立ち返って、考えてみてください。

 

最悪、玉砕してボツ企画になったとしても、ビジネスマンとしてのあなたの成長、情熱は、必ず相手に伝わります。見る人はちゃんと見ています。

やって損はない。それが『企画』という仕事です。

誰にでもできる『企画』という仕事

『企画』の進め方についてざっくりお話しましたが、そういう仕事に慣れていない方にとってはハードルが高く感じるかもしれませんね。

私達の日常生活は『企画』だらけです。

家族旅行の計画、マイホームや車のような大きな買い物も『企画』です。

ゲーム機やスマホを買うときだって、みんな『企画』をしています。

お家時間を充実させたい、ゲーム機を買ったらどんな生活になるか、をイメージし、どうやって入手するか、どこで買うのが得かを検討し、自分自身(もしくは家族)にプレゼして、意思決定。

これも『企画』です。

日常の一コマを「これって『企画』じゃん?」と少し意識するだけで、『企画』という仕事の本質がわかってくると思いますよ。

その醍醐味と楽しさが実感できたとき、きっとあなたはビジネスパーソンとして大きな成長への第一歩を踏み出したことになるのでしょう。

向き不向きを考えて悩むよりも、自分の生活のどこの『企画』が潜んでいるのか、それに気づくことから始めてめみましょう。