ビジネスシーンにおいては「提案」をすることがよくあります。

新製品や新プロジェクトの提案、業務改善の提案、新しいシステム導入の提案など。

作られた提案や企画書は、上位職や顧客などの提案相手から「承認をもらう」ことによって、実現に向けて進んでいきます。

この「承認をもらう」という仕事は、かなり気合も入り、ドキドキするものではないでしょうか。

私は中間管理職なので、役員に承認をもらう仕事も、部下の提案を承認する仕事も、両方やっています。

私に提案を持ってくる若手社員の中には、手がブルブル震えたり、声がうわずったりする部下もいます。

私自身が役員に提案を説明するケースでは、さすがに震えることはありませんが、多少の緊張感を持って臨んでいることは間違いありません。

でも、一生懸命悩んで頑張って作った提案も、上司に承認してもらえないケースって多いですよね。

気合を入れて準備してきたのに、かんたんに蹴られてしまう・・・

部下のモチベーションがガタ落ちする典型的なシーンです。

実際に私も、部下が何日も悩んで作った提案を「秒」で否決することもあります。

もちろん「なぜ否決するのか」丁寧に説明するように心がけてはいます。

内容はともかく、一生懸命頑張って提案をつくり、緊張しながら説明してくれる部下を、私はリスペクトします。

でも私に提案を持ってきた部下自身が管理職の場合は、

「はいダメ。理由は自分で考えて。以上」

ほんとに秒殺することもあります。

自らも部下の提案を承認する立場である管理職に対しては、私は厳しいのです。

 

前置きが長くなりましたが、「承認を蹴る側の人間」として、

なぜ上司は提案を承認しないのか?

についてお話したいと思います。

上司の攻略にご活用ください。

提案を否決する5つの理由

私が部下の提案を否決する理由は、主にこの5つです。

 提案の内容が現実的ではない
 なぜその提案が必要なのかわからない
 提案で実現できる状況に賛同できない
 提案の実行によるリスクが不安
 提案そのものがわかりにくい

それぞれについて解説します。

提案の内容が現実的ではない

いわゆる「絵に書いた餅」ということです。

個人的には「絵に書いた餅」は大好物です。

現実的ではない提案 = 革新的な提案

であることが多いからです。

だから承認する側としては、よほど方向性がズレていない限り、「なんとかサポートしたい」という気持ちになります。

興味津々となるので、多くの質問を投げかけてしまいます。

「それはいいけど、具体的にどうするの?」

「でもそんなことできるの?」

ネガティブな聞き方をするかもしれませんが、これは提案を否定して叩いている訳ではなく、提案のおもしろさに上司が食いついたと思っていいでしょう。

また提案の内容が革新的であればあるほど、上司も自分ひとりで決断することが難しくなります。

上司自身も、さらに上の上司から承認をもらわなければならないケースも出てきます。

上司は部下に質問を投げかけながら、

(この提案をどうやって社長に説明しようか・・・)

なんて考えているのです。

当然、部下は質問攻めに合い、やり直しを命じられるかもしれませんが、上司があなたの味方になってくれる可能性は高いでしょう。

なぜその提案が必要なのかわからない

上司は提案を見たときに、

(何でこんなことする必要があるの?)

と思うことがあります。

これは上司と部下の間に、問題認識のズレがあるということです。

部下は問題だと思っているのに、上司は問題だと思っていない。

例えば、部下が

「職場のコミュニケーションをよくするために座席レイアウトを変えましょう!」

と提案したとします。

でも上司が「うちはコミュニケーションは良好だろ」と思い込んでいたら、席替え提案は却下されるかもしれません。

部下が問題だと思っていることを、上司が同じように問題だと認識しているとはかぎりません。

席替えを提案するにしても、上司が問題だと考えていることを予測して、その問題に紐つけて提案をする必要があります。

もし職場が書類だらけで、上司がいつも書類探しに苦労しているのであれば、

「座席レイアウトを変更して書類棚を置くスペースを作りましょう」

と提案したら、すんなりOKがもらえるかもしれません。

提案で実現できる状況に賛同できない

上司と部下で問題認識が同じだったとしても、提案を否決されることがあります。

「提案はいいんだけど詰めが甘いんじゃない?」

「詰めが甘い」って上司はよく言いますよね。私も言います笑

提案の切り口がよくても、

(やり方によってはもっとよい結果が期待できるのではないか?)

(入り口はよくても出口が違うんじゃないか?)

そう感じてしまった場合、かんたんには提案を認めることはできません。

解決策を説明する前に、理想の状態(実現したい状況)を上司と共有していなければ、承認はもらえません。

上司と理想の状態を共有するためには、日頃から上司としっかりコミュニケーションをして、上司の理想や考え方を理解しておく必要があります。

提案の実行によるリスクが不安

提案の内容もいい、実現したい理想の状態も上司と同じ、それでも提案を承認できないケース。

それが、

(新たに別の問題が生まれてしまうのではないか?)

という上司の懸念です。

部下よりもビジネス経験が豊富な上司は、これまでもイヤというほどそういう経験をしているのです。

具体的にどんなリスクがあるのかは思い浮かばなくても、感覚的になんとなく、

(どこかに落とし穴があるんじゃないか・・・)

と不安がよぎります。

うまい話には裏がある、ってやつです。

上司に提案をする場合は、考えられる限りのリスクもセットで提案することは必須です。

いいことばかり言うセールスマンより、欠点やデメリットもしっかり説明してくれるセールスマンの方が信用できますよね。

提案そのものがわかりにくい

提案の内容や考え方がどんなにすばらしくても、それが上司に伝わらなければ意味がありません。

うまく伝えられなかったせいで承認してもらえないことほど、残念なことはありません。

上司も部下も不幸です。

 

実際に私も、単に数字が並べられただけのエクセル表で、何が言いたいのかさっぱりわからない提案書を見ることがあります。

「エクセル表じゃわからないからパワポでまとめてこい」

と指示したら、エクセル表をパワポにコピペしたものを持ってきたり・・・

頭のいい人であれば、数字の羅列から提案の内容を「想像」することができるかもしれませんが、細かい仕事の内容まで知らない上司が、部下ほど理解力があるとは限りません

 

また、虫眼鏡が要りそうなほど小さな文字がたくさん並んでいる提案書もあります。

その文字を一生懸命私に「朗読」してくれる部下。

「もう説明はいいよ、読んだ方が早い」

忙しいときや疲れているときなんかは、ちょっとイラっとさせられます。

 

子供でもわかるレベルの資料を目指すことが大切です。

そして、自分が伝えたいことだけではなく、相手が知りたいことにも配慮して資料はつくらなければなりません。

情熱を持って頑張ってつくった資料ほど、自分の努力を伝えたいという気持ちが強くなり、相手が知りたいことよりも自分が伝えたいことばかりの資料になりがちです。

そんな部下の気持ちは重々理解していますが、努力を上司に認めてもらいたいのであれば、文字の量や数字の細かさ以外にも方法はあります。

多少内容が薄くても、文字の装飾やフォントを工夫するだけでも心意気は上司に伝わります。

提案内容がどうこう以前に、美しくシンプルな提案資料にすることは重要です。

まとめ

提案をまとめ上げて承認を得る、ということは、むずかしい仕事ですが達成感も大きく、ビジネスの醍醐味とも言えます。

でも否決されたからといって、かんたんにヘコまないでください。

私が提案を否決する5つの理由。

 提案の内容が現実的ではない
 なぜその提案が必要なのかわからない
 提案で実現できる状況に賛同できない
 提案の実行によるリスクが不安
 提案そのものがわかりにくい

この5つの視点で、もう一度提案内容をチェックしてみてください。

また、これから提案をしようと考えているなら、ぜひとも資料作成にご活用ください。

そんなあなたを心から応援しています。