私が管理職に昇格したとき、当時の上司に質問されました。

「管理職の役割って何だと思う?」

えらく漠然とした質問で、私はすぐに答えることができませんでした。

(人材育成と意思決定と・・・)

一瞬固まった私にその上司は言いました。

「人を動かして成果を出すこと、それだけ覚えとけ」

その数年後、その上司はわが社のトップにまで上り詰めました。

 

管理職として、人を動かす方法や考え方は様々ですが、上司の勝手な都合や精神論だけでは、なかなか部下は思い通りには動いてくれません。

この記事では、

会社ではみんな何が動機となって仕事をするのか

についてお話したいと思います。

人を「動かす」4つの動機

人が行動するときは、何かしらに影響を受けるものです。

例えば「疲れたから寝る」も「疲労」という影響を受けて「寝る」という行動をとるわけです。

子供を早く寝かしつけたいから、昼間思いっきり遊ばせて体力を削る、なんてこともありますよね(^^)

子供を疲れさせて早く寝つかせるのは、「人間の本能」を利用して、親が子供を「動かしている」と言えます。

このように「人間の本能」を使って人を動かすことはできますが、会社でこれはオススメできません。

「この仕事が終わるまで飯抜きだ!」

「(異性にモテモテの)Aさんをサポートにつけてやるから頑張れ」

今のご時世ではパワハラやセクハラになりかねません。

 

会社では、人が働く(動く)動機は大きく4つあります。

 お金のために働く
 自己成長のために働く
 契約とルールに則って働く
 信念と情熱で働く

並べてみれば当たり前のことばかりですが、会社で「人を動かす」ためには、この4つをうまく使い分け、人を動機づけることによって行動を促していくことになります。

会社で人を動かすために

会社や上司にとって一番都合のいい部下は「信念と情熱で働く」タイプです。

安月給でも文句も言わずに、困難な仕事に立ち向かって会社に尽くしてくれる部下。

そんな都合のいい社員や部下なんてそうそういませんよね。幻想です。

熱血上司が「モチベーション上げて頑張ろうぜ!」なんて吠えたところで、現場はしらけるばかりです。

かんたんな仕事なら、契約だけで粛々とやってくれますが、困難な仕事に立ち向かうには、動機としてちょっと弱い。

かといって、会社の部下にお小遣いを渡して働いてもらうこともできません。たまに食事をおごるくらいしかできません。

「自己成長のために」難しい仕事に立ち向かってくれるケースもありますが、転職するリスクもあるので、会社にとって都合がよい存在とは言い切れません。

だから会社や上司は「モチベーション」という身勝手な幻想にすがりつきたいのです。

 

でも、目指すべきはやはり「難しい仕事に高いモチベーションを持って取り組む部下と組織」の実現です。

呪文のように「モチベーション上げよう」と唱えるだけではなく、創意工夫をして実現していくのが管理職の仕事です。

そのために、4つの動機を相手や環境によって使い分けることによって、人を動かします。

 お金のために働く
 自己成長のために働く
 契約とルールに則って働く
 信念と情熱で働く

 

例えば新卒社員であれば、あらゆる面でモチベーションが高いだろうと思います。

お金を稼ぎたい!成長したい!社会人としてルールを守りたい!会社に貢献したい!

でも難しい仕事はまだまだこなせませんので、まずはかんたんな仕事から・・・となります。

モチベーションの塊のような新卒社員も、しばらく働いているうちにいろいろと悩み始めます。

「思ってたのと違うけど給料いいしまいっか・・・」

「もっと大きな仕事がしたいのにつまんない・・・」

「やっぱり他の業界で働いてみたい・・・」

会社として、上司として、放ってはおけない状態になります。

 

例えば「思ってたのと違うけど給料いいしまいっか・・・」のタイプ。

下図では「お金のために働く」というポジションになります。

お金のためだと割り切って淡々と仕事をする部下は好ましいものではありません。

上司としては、もっとモチベーションを上げて難しい仕事にもチャレンジしてもらいたいですよね。

であれば、「契約とルール」による動機づけを行います。

手順が決まったかんたんな仕事を、ルール通りにやってもらうことによって、会社の利益になる仕事をやってもらいます。

かんたんな仕事なので、成果もかんたんに出ます。成果が出れば褒めてあげる。

そんなことを繰り返していけばモチベーションも上がり、もっといろんな仕事がしてみたい、と思うようになるかもしれません。

そうなれば、もっと難しい仕事を与えていけばよいのです。

うまくいけば、能力も高まり給料も増え、モチベーションも上がってきて、理想的な部下に生まれ変わるかもしれません。

このイメージ図を眺めて、あなたのまわりの人や部下が、どこに位置しているのか、どうすれば理想に近づいていくのか、考えてみてはどうでしょうか?

やり方は相手次第、あなた次第です。