今回の記事では「管理職の時間管理」について、管理職のバイブル『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を参照しながら、私が日々実践している実例を交えて解説します。
40年近く前に書かれたビジネス書ですが、その内容や考え方は働き方がどのように変わっても大切なことばかりです。 新型コロナウイルスによって在宅勤務が注目を浴びていますが、むしろリモートワークの時代にこそ、この本に書かれているマネジメントの「本質」が重要になってくることは間違いありません。
自分の時間をコントロールする
仕事のアウトプットを増やそうと思えば、単純に自分自身の作業スピードをアップすればいいのですが、これは簡単ではありません。
確実な方法は、長時間労働です。
でも今はそんな時代ではありません。
今求められているのは、限られた時間で効率的にアウトプットを出し続けることです。
特に多くの人に影響力を持つ管理職は組織におけるインフルエンサーです。
自分ひとりが一所懸命手を動かしてアウトプットを出すのではなく、ひとりでも多くの人にインフルエンスすることによってアウトプットを最大化する。それが求められる存在です。
そのためには、インフルエンスするための時間を少しでも稼ぐ必要があります。
机にかじりついて、気が付けば1日が終わっていた、なんてことはあってはなりません。
管理職のアウトプットを大きくするためには、自分自身の時間をコントロールすることがとても重要なのです。
別記事でもお話しましたが、効率的にアウトプットを出すためには、一番時間がかかる仕事や、定例会議など時間が動かせない仕事を中心に、全体の流れを組み立てるのが理想です。
管理職のバイブルと呼ばれている『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を教科書にして、私の実体験を交えながら、複数回にわたってマネジメントの本質に迫ってみます。 今回は仕事の優先順位のお話です。「めんどくさい仕事」「時間がかかる仕事」を最優先にして、仕事の流れを組み立てていくことが、実は最も効率的な仕事の進め方なのです。
ところが実際はどうでしょうか?
ビジネスの現場では突発的なことが多いですね。せっかく全体の流れを組み立てたとしても、突発的な会議や対応によって、コトは思い通りに進みません。
インフルエンサーが、インフルエンスされすぎるもの問題なのです。
時間がコントロールできない管理職
私の会社にも、まわりに翻弄され時間のコントロールができていない管理職がいます。
とにかくお呼びがかかればすべての会議や面談に顔を出す。朝から晩まで席にいないのです。
フットーワークが軽く面倒見のよい上司ですね。人柄もいいんです。
でも彼の職場は、まわりと比べて圧倒的に残業時間が多く、そのわりにはアウトプットが少ないのです。納期遅れも多い。
朝から晩まで席を離れている彼が自席に戻るのは定時を過ぎてからとなります。そこからやっとメールのチェックをしたり、部下とゆっくり話せるようになります。
上司に直接相談したいことがある部下たちは定時を過ぎても彼を待っています。
やっと席に戻ってきていろいろと報告や相談をします。
そこでアドバイスや指示をもらいます。
定時は過ぎているのでそこで帰ってもよいのですが、多くの部下は、せっかくアドバイスをもらったのでそのまま仕事に取り掛かります。
そして上司はまたメールチェック。場合によっては残業している部下に声をかけて話を聞いたり、仕事の指示を出します。
さらに時間が経過し、さすがに部下はみんな帰宅しましたが、上司はまだメールの処理が終わりません。バンバン返信メールを打ち続けます。
翌朝、出社してメールの受信トレイを開いた部下は、上司からの大量の業務指示メールを朝っぱらから目にするのです。
この上司は土日も自宅で仕事をするので、月曜の朝、部下が目にするメールは桁違いの量です。
人柄もよくフットワークの軽い仕事熱心な上司ですが、あなたはこのような職場で働きたいと思いますか?
私の時間活用法
具体的に私のやり方を紹介します。
もちろん、これが正解だとは思っていません。あくまで私なりのやり方です。
まず私の場合、私の予定表(会社で共有しているアウトルック予定表)に、毎日午前に1時間、午後に2時間、「報連相タイム」を設けています。毎日です。
仕事をする上で大切な「報連相(ホウレンソウ)」とは、報告、連絡、相談のことで、要は、「職場内でコミュニケーションをちゃんとしましょうね!」というだけのことです。 言葉の意味としては、これだけ知っていれば十分です。 言葉の定義や重要性の説明は、これ以上必要ありませんね。 この記事では、私が実際にこの「報連相」をどのように実践しているかを紹介させていただきます。
「報連相タイム」は部下とのコミュニケーションのための時間ですが、メールの処理など私が机に座って何かをする時間も兼ねています。
それ以外に、毎週あるいは毎月必ずやらなければならない作業も、あらかじめ予定表に入れています。
例えば「週報の作成」「月末の伝票処理」などです。
これらを私は「ブロックタイム」と名付けています。
そしてブロックタイムには、部下が会議や面談を設定することを原則禁止しブロックしています。
先方の都合などもあり、どうしてもブロックタイムに予定を入れざるを得ない場合に限り、私の許可を得た上でブロックタイムを開放します。
しかし簡単には許可しません。
明日報連相タイムにA社との面談をいれたいのですが・・・
うん、いいけどなんで?
明日中にA社から回答をもらわないとダメなんです
でもその仕事は先月指示したんだよ?なんで今になってドタバタすんの?
すみません、先方に依頼したのが先週なんです・・・
問題はそこな~
1日に3時間も予定をブロックしておいて、部下に簡単に予定を入れさせないなんて、かなり傲慢な上司かもしれません。
まあここまでやる人は少ないと思います。
私の狙いは2つあります。
部下を育てるための時間管理
ひとつは、計画的に仕事を進める習慣を身に付けてもらうためです。
私は仕事柄、社内外から会議に呼ばれることが多く、予定はすぐに埋まってしまいます。
更に、私は1日3時間も予定をブロックしていますので、部下が私の予定を確保しようと思えば、かなり前から抑えておかないといけません。
私にいつ仕事の報告ができるかどうかわからない状態でも、とりあえず先に私の予定は確保する必要があるのです。
私の予定が確保できたら、それが部下にとっては仕事の納期となり、その日に向けて計画的に仕事を進める習慣が身につきます。
仕事の納期を自主設定させているようなものです。
「いつでも上司の時間は確保できる」と思っていては、部下の納期意識は欠落し、ダラダラと仕事をするかもしれません。
管理職は「竜の頭」
もうひとつの理由は、私自身が1日の予定に余裕を持たせたいからです。
管理職がきまぐれで放った一言でも、多くの部下が動くのです。
その一言の重みを理解し、そして一言を発するときにはじっくりと考えて、ベストなタイミングを探るべきです。
「竜の頭」はなるべく動かさない方がいいんです。
管理職の仕事は手を動かすことではありません。
ひたすら情報収集をして、ここぞというときにレバレッジをかけることによって、チームとしてのアウトプットを最大化することです。
管理職がドタバタしていては、情報収集もできませんし、レバレッジをかけるタイミングも逃してしまいます。
「竜の頭」は、常に頭をフル回転させながら、獲物(レバレッジをかける相手とタイミング)を虎視眈々と狙うのです。
ただ、管理職も元々は優秀な「選手」だったわけです。
元選手としては、じっとしているのは耐えがたいときもありますよね。バットを振りたい、ボールを蹴りたい・・・部下にいいとこ見せたい・・・
でも、自分が「竜の頭」であるという自覚を持って、そういう衝動を抑えることも、管理職の重要な資質であると私は考えています。
私の残業
管理職というのは意思決定権を持っていますので、いろんな部門や社外から、緊急案件がよく飛び込んできます。
「今日決めないといけないので何とか時間ください!」みたいなことが日々起こるのです。
役員から急な呼び出しを食らったり、重要な会議に代理出席を頼まれることもあります。
海外から表敬訪問で来られるお客様もいます。
さすがに「ブロックタイムなのでダメです」とは言えません。
そんなときには、ブロックタイムを部下に開放します。
そうすると、私自身が作業をしたりメールを見たりする時間が削られます。
そんなどうしようもないときに、私は仕方なく残業します。
めずらしく私が残業していると、部下がニヤニヤしながらお菓子を持って寄ってきます。
あれ~?めずらしく残業ですか?笑
うるせー、早く帰りたいからあっちいけ!
ははは、お菓子でもどうぞ!あ、〇〇さんもどうぞ!
たまに私が残業すると職場の雰囲気がよくなるという、こんなメリットは想定外でした。
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の中で著者アンディ・グローブはこう述べています。
管理職の仕事は大部分が予測できる。したがって、できる仕事を予測して、その準備態勢を整えておくことが、経営管理上の仕事で経験する、どうも小間切れ仕事ばかりでとりとめがないという感じと現実のギャップを極小化するための常識であり、重要な方法なのである。
管理職としては、頻繁に現れる中断者に対して、問題の解決を待てるかどうか、はっきり決めさせるように仕向けるべきである。
ホイホイと部下に時間をくれてやるのは考えものですね。